takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

悪魔の掌中その7

「変わった物、色々置いてあるんですね~。骨董品って初めて観ました。じいちゃんの木彫りもあるのかな~?」店の奥が居間になっていて、そこから店内が見渡せるようになっている。上がり框の前で下駄を脱いで居間に入った。冴子の後に付いて台所に行きすがらハヤテがそう言うと、「あれは父の形見みたいな物よ。もちろん祐蔵おじさんの作品もたくさんあるわ。おじさんは個展を開くほど有名だったけど、父が代理として販売していたのよ。興味があるなら、明日にでもゆっくり観ればいいわ。さあ、テーブルの前に座って。」
台所には古いがガッシリとしたテーブルが置いてあり、既にさっきの女の子が、不貞腐れたように伏し目がちに座っている。少し長目の髪の毛を、うさぎの耳の様に両方結んで垂らしている。目が大きく美人系の顔立ち。
「はい!麗美、ちゃんとして!こちら前から言っていた親戚の鞍馬 疾風丸君。はい!頭を下げて。ちゃんと挨拶する!」「はじめまして、麗美です。小学6年生で~す。」ちょっとふざけ気味に挨拶をする。「あっ、はじめまして。疾風丸です。学校には行ったことありません。確か15歳だと思います。」ハヤテは学校にいっていなかった。本人にもその理由は解らない。「えww?小学校にも~?中学校にも~?信じらんな~い!!」麗美が素っ頓狂な声をあげた。
「これ!麗美!失礼でしょ?学校に行かなかった理由は、私が祐蔵おじさん、つまり丸ちゃんのおじいちゃんから聞いているわ。その訳聞いたら麗美驚くわよ。」
意味あり気に『おばさん』の冴子が、ニヤッと笑った。「あっ、そうそう。丸ちゃんの食事の用意しなくちゃね。うちは、ふたりっきりだから6時前には食べちゃってるのよ。7時からこの子の家庭教師が来るしね。」「一丁前に家庭教師って言ってるけど、斜向かいの高校生のお兄さん。この子、鞍馬の血筋引いてるんだけど、イマイチ成績が芳しくなくてね。」冴子がため息混じりで麗美を見る。麗美が「ふんっ!」と顔を背けた。
「ま~海外書物の翻訳の仕事が結構入ってて、店番しながらでも生活に不自由しないほどの収入が入って来るから、世間並の事もしてあげられるのよ。」と冴子は笑って冷蔵庫を覗いた。