takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

悪魔の掌中その13

ハヤテは(ハッ!)として、即座に身構えた。なんという不覚。いきなり眠ってしまった。自分はどうかしてしまったのかと、自己嫌悪にも似た感情を抱きながら。
しかし、目に飛び込んできたのは虎ロープで縛られ横たわっている清志だった。クエッション・マークが、頭の中で幾つも点灯した。清志も今目覚めたらしく、驚いた様にせわし気に瞬きを繰り返している。憑き物が堕ちたと表現すべきか、普通の高校生の表情をして不安気な眼差しで辺りを見渡している。
冴子の能力で清志もまた、夢を観ていた。それは両親が身震いしている清志に寄り添って、しきりに励まし、いたわってくれてる情景。父が「お前は真っ直ぐ生きなきゃ駄目だ。何かあったら俺たちが守ってやるから。」と言い、母が「私の可愛い清志。心配しないで!私達はどんな事があってもあなたの味方ですよ!」と、抱きしめてくれているところで目が覚めたのだ。切羽詰まっていたとはいえ常識的に考えれば警察沙汰にされても仕方がない現状。清志は、まな板の鯉にも似た心境で、麗美そして冴子を見上げた。
麗美は恐怖と嫌悪が入り交じった眼で清志を見ているが、冴子はいつもと違う彼の変化に、何らかの事情が狂気の沙汰を巻き起こしたに違い無いと確信した。自分は人を見る眼は持っている。どう考えても普通の清志では考えられない行動をとっている。その原因を訊き、解消してやるのが第一だと考えた。「麗美、もう今日は休みなさい。下の母さんの部屋に布団敷いてね。さっ、早く!」何か言いたげの麗美だったが、こくりと頷くと部屋を出て行った。ドアを閉めると清志を縛った紐を解き「さあここに座って。」と椅子に座る様、促した。