takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

悪魔の掌中その14

座れと勧められた清志であったが、うつ向いたまま動かなかった。「ちょっと・・・、清志君?」再び声を掛けかけた途端、いきなり正座して身を正した。そして号泣しながら床に顔を擦り付ける様に土下座した。
「どうも・・・どうも申し訳ありませんでした。僕がやった罪は理解してます。警察に知らせて頂いて構いません。ご迷惑をおかけして・・・すいませんでした。」そう言ってまた泣き崩れた。「警察に知らせるかどうかは、話を聴いてから決めるわ。余程の事があなたの身に降り懸かっているみたいね。あなたが精神崩壊寸前にまで追い込められている原因は何か。それを聴いてからでも遅くないと思ってるの。」真剣な眼差しで冴子は言った。清志は思いつめたように暫くうつ向いていたが話す覚悟ができたのか、涙を腕で拭って「有難うございます。」と頭を下げた。
「実は・・・五月頃一人の男子が転校してきました。斑目 秀也という名前でした。家は裕福なのかアメリカ留学をしていたと自己紹介してました。背が高くイケメンで僕とは正反対のタイプでした。彼は僕の後の席になりました。彼は僕の予想に反して誰とでも気さくに話し、気配りもできる優しい子だったんです。特に僕には親しみを持って接してくれたので、すぐ大の仲良しになったんです。彼は勉強もとてもよくできました。僕が徹夜で試験勉強しても、いつも成績は彼の方が良かったんです。悔しかった。何も取り柄の無い僕が皆に認められるのは勉強だけ。これだけは譲れないと頑張ってきたのに・・・。僕は勉強のため観たいテレビも我慢して必死なのに、他の友達と昨日のゴールデン番組の内容で盛り上がっている。不公平だと思うと同時に、何かコツでもあるのかと思い始めました。ある時彼に訊きました。『君は必死に勉強している訳じゃないのに、何でそんなに成績がいいの?』と。すると彼は内緒話をする様に顔を近付けてきて小声でこういうのです。
『誰にも内緒だけど、清志君は親友だから教えてあげるよ。実はね、頭の回転が良くなる薬を飲んでいるんだよ。あっ!いやいや、勿論覚醒剤なんかじゃないよ。父が開発した薬なんだ。』そう言って小瓶に入った水色の錠剤をカバンから取り出したんです。『よかったら一錠あげるから飲んでごらんよ。あっ、心配だったらトイレに捨ててもらっても構わないし・・。でも、他の人の手に渡るのはちょっと困るんだ。そこはよく覚えておいてね』そう言って僕の手の平に薬を一錠のせてきました。」