takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ、原点回帰・その3

「ちょっと俺も外の空気吸ってくるよ」と言い残し、橘が車から降りて行った。
ふと見ると助手席にイブが座ったままでいる。昭雄は「イブさん、休憩とらないんですか?」と声を掛けた。昭雄は既に橘から成り行きを聴いていたので、イブが自分はロボットだと打ち明けた後、どういう行動をとるのか気になった。そして突然打ち明けた心境も理解できない。「イブさんって、ロボットだったんですね?」素直に問いかけた。イブは昭雄と美鞘の居る方に振り返り、苦笑しながら「ええ・・・」と言った。「話してもらえるんでしょうか?」小さく昭雄が言う。イブは少し間を開け、「ある程度なら・・・。いろいろ複雑なのよ」見つめている瞳が暗い。(これが・・・この人がロボット?こんな表情、ロボットにできるのだろうか?僕たちはこの人に担がれているんじゃないだろうか?)超越した力を映像で観たにも関わらず昭雄は、信じられない思いで彼女を見返している。美鞘は何も言わず俯いている。「会社に戻ったら、話しましょう。あなた達からも私に話すことある筈だから」そう言ってイブが前に向き直り会話は途絶えた。そのうちに若い女の子達の華やかな話し声が聴こえてきたと思ったら、キリクノのメンバーが乗り込んできた。手にそれぞれドリンクを握っている。「コーヒーだけど、どう?」メンバーの年長である亜紀が缶コーヒーを1本ずつ、昭雄と美鞘に手渡してきた。ふたりはお礼を言って、それを受け取る。続いておっさん二人の声が車の外でする。
「お昼過ぎちゃったけど、食事はどうします?」と高畑が橘に訊いている。「う~ん、車酔いっていうかー緊張していたからなー。飯って気分じゃなかったけど・・・、こうして、落ち着いてきたら、あらためて腹減ってるんだと感じますね~」二人して笑い声をあげている。「じゃあ、ナビで途中の食事できる処を探してラーメンでも食べて帰りますか?」「そうですね、そうしましょう」打ち合わせが終わり、おっさん二人が乗り込んできた。「じゃあ、途中でラーメンでも食べて帰ります!キリクノ達は変装よろしく~」と高畑が声を掛け、コンビニから車を出した。