takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ、原点回帰・その6

「私がなぜいきなり正体を打ち明けたのかと言いますと、この私の左腕にあります」そういうと右腕で下におろしている左腕の肘の部分を持って、テーブルの上に『ゴトッ』と置いた。「屋上から美鞘さんと飛び降りた際、衝撃を和らげる為に壁に打ち当てました。腕が壁に刺さり思惑通り落下の加速は防げたんですが、肘の関節部が耐え切れず壊れてしまいました。」そういうと、ピクリとも動かない肘から下の腕をブラブラと有り得ない向きに揺らせて見せた。高畑は「アッ、それでお茶汲みが...」イブがこくりと頷く。

「この腕が元通り動かないと何も出来ません。ましてや美鞘さんのお手伝いの役にも立てません」成り行き上高畑にグレート・デストロイの名を出したが、未無来所長がその正体だとはまだ言わない方が良いと思った。他の3人も口に出さないのは暗黙の了解と云うことだろう。今、正体を明かすとショックで彼がどうなるか想像もできない。

高畑にとってもあの不可解な出来事が何だったのか一向に解らず終いで、中途半端に思考が止まったままでいる。それでも言い出さないのは、わけの分からない恐怖心が口に出すのを抑制しているからだった。イブは「この腕を修復できるのは私の殻を造った所博士だけです。だからもう一度原点に戻って博士を探し当て、出来ればより強靭な体に改造してもらおうと思います。高畑さんや社長には大変お世話になりながら、勝手な事情で一旦此処を去ることを申し訳なく思っています。ですが、今回ばかりは致し方ありません。お許し下さい」と、うなだれる様にイブは頭を下げた。