takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

2022年1月のブログ記事

  • 鞍馬龍二 その17

    店から家までの僅かな距離がなかなか縮まらない。自問自答を繰り返し歩いている。(あの娘を助けよう)(なぜ?お前に関係ないだろう?)(あの店の人達が不幸になる)(食べに行くだけの店だぜ?ほっときゃあいいんだよ)(卑劣な奴は許せない)(そいつがお前に何かしたのか?ヒーロー気取りじゃないのか?)(いや、断... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その16

    3人組は床に這いつくばり、ビールでズブ濡れになりながら震えている。「オバケだ、お化けがいるww!」髭が叫んだ。後の二人も口をパクパクさせて、跪いている。瓶の破裂音は、そう広くもない店の奥にいる女将さんにも聴こえたらしく、バケツと布巾を持ってとんできた。幸いにも客はこの3人と龍二だけだったから、大き... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その15

    まだ話し足りない様子の女将さんだったが。「おい!」と言ってオヤジさんが睨み付けているので、渋々定食を取りに行った。膳を運んできて「ごゆっくりどうぞ。」と立ち去ろうとする彼女に「ところであの娘、今日は休みですか?」すんなりと意識せずに訊けた。女将さんは龍二の反応を伺う様に「今日はデートなのよ。」と短... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その14

    そんなある日の事、いつものように食堂のガラス戸を開いて店に入るとすぐに違和感があった。なぜか暗いのである。普通に蛍光灯は点いているしテレビはお笑い番組なのか、ブラウン管の中は盛り上がっているのだが・・・。はたと気がついた。暗いのは店内の雰囲気なのだ。あの娘がいなかった、どこを見渡しても。「いらっし... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その13

    街での生活を始めたばかりの龍二は、まだ世間知らずで外食も数える程度であったから、食べ比べるほどの経験もなく、この店に入って最初に注文した焼き魚定食を定番メニューとしていた。龍二は、値段も手頃で素直に美味しいと思うこの定食を気に入ってはいたが、食べ終わって(明日はちょっと贅沢に焼き肉定食でも頼んでみ... 続きをみる

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  • 鞍馬龍二 その12

    龍二は山の生活が嫌で仕方がなかった。親の祐蔵にそれを言っても埒が開かないから、夜逃げ同然で山を降りた。鞍馬一族で、唯一街で暮らす伯父の春蔵の家に転がり込んだ。春蔵は小さい頃から龍二をとても可愛がって、こと或るごとに「こんな山降りて俺んとこにこい。」と本気だか冗談だか分らない口調で声をかけてくれた。... 続きをみる

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  • 鞍馬龍二 その11

    桃栗駅から百メートル程西に向い、辻を左に折れた直ぐにその店はある。『骨董品 民芸品 響』手作りの看板が揚がっている、古いが頑丈そのものの寄棟造りの家。周りは好景気の波のお陰で新築の家ばかりだから、却って良く目立つのである。『キキッ。』自転車のブレーキの音がして外灯の明かりの中に龍二の姿が映し出され... 続きをみる

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  • 野良猫が懐いてきたので飼っている

    プロフィールにも書いている通り、ウサギを死なせてしまってペットは金輪際飼わないと誓ったけれど、思わぬ成り行きとなってしまった。猫は小さい頃からよく飼っていた。うちは田舎なので、猫、犬は勿論家畜との分類を度外視すれば、ニワトリ、牛、豚、ヤギまで飼ってた。私の姉は他県で複数匹猫を飼ってる。一時8~9匹... 続きをみる

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  • 鞍馬龍二 その10

    大変な事態となった。向井グループと龍二、圭太だけなら何とか誤魔化しが効く。しかしマスターの目の前でやってしまった。マスターも確信がなかったから、今日まで疑わしくもお客さんとして迎え入れていたが、こうもはっきりとネタを暴露した。マスターは良い機会だと思った。彼等にこの雀荘での出入り禁止を言い渡した。... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その9

    サイコロを二個摘み無造作に放り投げる。全く自然だ。マスターは思った。普通不正とかイカサマをやろうとすると、その気配が漂うもので感性の鋭い者ならヤッタナ、ヤッテルナと何となく勘付くがこの青年にはその気配が全く無い。それ程までに熟得した手練と云うのか?このどこにでもいそうな学生が・・。サイコロは、また... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その8

    サイコロを振った。ニと三の目が出て五となる。自分の山から何気なく配牌を積もり手牌を観ると(なんだこれ?!)有り得ないものが目の前にあった。字牌、しかも風牌ばかりが・・・。リーダーの言葉ではないが心臓が踊った。十四牌全て字牌。(こ、これは・・)後ろにいる龍二の方を思わず振り向きたい衝動にとらわれたが... 続きをみる

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  • 姓名判断

    私が確か中学生の頃だったと思うが、母が面と向かってこんな事を言った。 「ある姓名判断をする占い師にあんたの名前を診てもろたら、将来どうしようも無い人間になると言ってたよ」それを聞いたとき自分自身がとても恥ずかしく暗い気持ちになったけど、今考えたら悪いのは名付け親であって私のせいでは無い。67歳にな... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その7

    東場は何事もなく過ぎていき、圭太はプラス12で2位と云う結果となった。皆、良い手に成らないのかリーのみとかリーピンとか安上がりのオンパレードで、後2千点でも多ければ圭太がトップを取れたのだ。いつの間にか圭太は(こいつら大した事はない。俺と同レベル。いや俺のほうが上手いかも)と気を緩めはじめた。南場... 続きをみる

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  • 鞍馬龍二 その6

    給料日には鞍馬とラーメン屋で、少しダベってから帰る約束をしていた。先にラーメン屋に行くと、調理師の三人がいて既にラーメンを啜っている。彼等はいつも洗い場を通り抜ける時、邪魔だと云う様に圭太を押しのける。最初の頃は洗っていた皿を落としそうになった。彼等は「洗い場のくせによ~」と辺り構わず口にする連中... 続きをみる

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  • 鞍馬龍二 その5

    給料日には鞍馬とラーメン屋で、少しダベってから帰る約束をしていた。先にラーメン屋に行くと、調理師の三人がいて既にラーメンを啜っている。彼等はいつも洗い場を通り抜ける時、邪魔だと云う様に圭太を押しのける。最初の頃は洗っていた皿を落としそうになった。彼等は「洗い場のくせによ~」と辺り構わず口にする連中... 続きをみる

  • 大人のおつまみ

    今日は会社は休み。昼間っから酔っぱらいたい気分。 なので、酒のつまみを造ろうと冷蔵庫を覗く。 こんにゃくを発見。つけて味噌掛けて味噌も発見。よし!久しぶりにカプサイシンに浸ってみるか? こんにゃく一丁をスプーンで1口サイズに齧っていく。それをフライパンに油を引かず炒める。パチパチと香ばしい音と共に... 続きをみる

  • 鞍馬龍二 その4

    「サイコキネシスって知ってるかい?」そう龍二が訊いた。 「勿論、知ってますよ~。俺、このバイトするまで欠かさずアニメのバビル二世、観てたんですから~」圭太は得意顔で喋りだした。「日本名、念力とか念動力と云って精神力で物を動かしたり、浮かせたり。力の弱い能力者は腕時計の針を動かせる程度だけど最強な力... 続きをみる

  • 鞍馬龍二その3

    勤めて一週間が経ち少し慣れ始めた頃、夜10時過ぎロッカーで着替えを済ませ帰りかけたら、鞍馬が声を掛けてきた。「どうだい?明日は土曜日だし、今から近くの深夜営業やってるラーメン屋にでも行ないか?おそがけの歓迎会ってことで・・。 奢らせてもらうからさ。」そう言ってニコッと笑った。「えっ?ほ、本当ですか... 続きをみる

  •  鞍馬龍二その2

    立山圭太は翌朝、電話でレストランにアポを申し込んだ。相手側は早速今日の昼過ぎにでも面接に来てもらえないかとの対応だった。今日は土曜日で、いつでも時間は空いているから「わかりました。よろしくお願いします」と返事をして電話を切った。胸がドキドキした。こんなに緊張したのは高校入試の面接以来だ。(面接か~... 続きをみる

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  • 二章 鞍馬龍二その1

    若い頃、組の使いっぱしりをしていた立山は、学生時代に汗水垂らして田畑で作物を栽培している両親を、いつも心の中で軽蔑していた。 会社員の親を持つ同級生を羨ましく思い、自分でも納得出来ない劣等感を胸の奥にいつも抱いていた。立山は勉強する事が嫌いで、成績は良くなかった。そんな息子に父親は、普通の生活が出... 続きをみる

  • 飛べ!ハヤテ丸12

    「はい、1万円」早く受け取れと言わんばかりに目の前に持ってくる。「あっ、ああ~、それでいい」気が変わって取り消されるのを危ぶむ様に、ひっ勺ってポケットに捻じ込む。その間も立山の悪知恵はフル回転した。(ちらっと見えたぞ。リュックの中には札束がぎっしり入ってた。これは、ボケ鴨がドエライねぎ背負ってるぞ... 続きをみる

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  • 飛べ!ハヤテ丸11

    ローカル列車に乗り、五つ目の駅で降りたハヤテは、顎に手をやり考えていた。(さあ、これからどうしようか?)世間知らずの悲しさ。その方法が分らない。 今どき幼い子供だって、公衆電話の電話帳で調べるなり お金があれば広い道路に出てタクシーを拾うなり、駅員に交番が近くにないか訊き、あれば行って地図を書いて... 続きをみる

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  • 飛べ!ハヤテ丸10

    真昼のプラットホームに乗客はそう多くない。だが、この名古駅は特急列車も停まる主要駅だ。疎らにだが乗客が散らばるように佇んでいる。しかし誰一人彼に関心を持つ者はいない様だった。ハヤテは、気持ちでは焦りながらも「その人、線路に飛び込むよwww!」と、今の段階では流石に叫べない。少しづつ彼に近付いて行く... 続きをみる

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  • 飛べ!ハヤテ丸9

    「皆さんお騒がせして、申し訳ありませんでしたー!」ハヤテは深々とお辞儀をして元の席に戻った。周りの人達が声を掛けてくれ、それにニコニコと応えた。 山ではこんなに大勢の人間を見たり話したりすることはなかったので、少し疲れうとうとと居眠りをしているうちに、電車は乗り換え駅に着いた。後はローカル列車で名... 続きをみる

  • 飛べ!ハヤテ丸8

    鳶(トンビ)は鷹科の猛禽類だが、性格は比較的おとなしい。肉食系ではなく雑食系であるから、全くテリトリーの違う鳶が人を襲う事はない。 しかし男(秀也)には、目の前で巨大な翼を羽ばたかせ、鋭い眼光で睨み付けるその先にナイフのように尖ったくちばしが、自分の眼球を狙っている様な錯覚に陥った。恐怖で体が小刻... 続きをみる

  • 飛べ!ハヤテ丸7

    一本歯下駄をボーッと見つめながら履き始めた当時の事を思い出していると列車は停車、発車を繰り返し、乗客の乗り降りによって車内の様子も変わっていく。響 冴子の住んでいる所の最寄り駅までは約1時間。 次の乗り換え駅を確認しようと四つ折にした行程表をポケットから取り出そうとした時、ハヤテの前に立った若いア... 続きをみる

  • 飛べ!ハヤテ丸6

    幼い頃、一度しか乗った事のない彼には理解しようもないが、昼前という時間帯は比較的、列車内は空いている。それでも乗客は結構いて、座席は殆ど埋まっている。そんな中、彼の一本歯下駄に気が付いた乗客が、好奇の目を向けてくるが無視を決め込んだ。この下駄もじいちゃんの手作りだ。ハヤテの能力は一歳を過ぎた頃から... 続きをみる

  • 飛べ!ハヤテ丸5

    松川駅の駅員は親切に対応してくれた。 窓口で事情を話し住所が記してある便箋を見せると、若い出札係の彼は、席を立って年配の駅員を呼んで来た。彼は奥のパソコンに向かい住所を入力し交通ルートを検索して、それをコピーしている。勿論、そういう作業をしていることをハヤテには知る由もない。暫くして、紙切れを一枚... 続きをみる

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  • 飛べ!ハヤテ丸4

    『ピンポーン、まもなく終点の松川駅に到着致します。 お忘れ物ございません様御降り下さい。』車内放送が入った。 パラパラとお年寄りが席を立って降りてゆく。こういうことが不慣れな少年は、もぞもぞともたついて、最後となった。幾らなんだろう?心臓の脈打つ音が大きく早くなっている。取りあえず札束を一個渡して... 続きをみる

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  • 飛べ!ハヤテ丸3

    隣の座席に下ろしたリュックを引き寄せ開けてみる。 中には紙の束がぎっしりと入っていた。(これは確か一万円札と 云う物だな。お金だ。じいちゃんが山の外では、これさえあれば大概の事はできると、いつも言ってた。でもバスのお金これで足りるかなあ。)今時の幼稚園児だって知っている事が彼にはわからない。 数え... 続きをみる

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  • 飛べ!ハヤテ丸2

    バスの運転手は駐在所前で停止しドアーを開けた。ペンキの剥げたベンチに誰も座っていない事を確認し、閉めようとした刹那、ビユューと風が巻き起こす音を聴いた。(え?!突風か~?!びっくりしたー)そして何事もなかった様に出発したのである。ニキロ程走るとおタネさんの行きつけの診療所前である。ミラー越しにいつ... 続きをみる

  • 飛べ!ハヤテ丸

    天狗キッド 九月に入ったばかりの午前十時ごろ。まだまだ猛暑は厳しく、もう既に太陽は 強烈な日差しを容赦なく降り注ぎ、警らから帰ってきた日置巡査の汗で出来た染みさえも蒸気となってゆらゆらと舞い上げていく。 (あw喉の中が乾ききって痛いぞ。早く冷たい水を飲まなきゃ。) 先日も独り者の初老の男性が庭弄り... 続きをみる

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  • なぜか野良猫に懐かれた。

    野良猫は警戒心が強く、身も知らぬ人間には近寄りもしないと思っていた。それがある日を境にべったり足元に体を寄せ付け離れもしなくなった。思い当たる節がないことはない。ある日庭に三匹の猫が入ってきて彷徨いていた。体は大して大きくないが先頭に歩いているのが母親(時折寝転んで乳をやっていた)二番目に薄茶色の... 続きをみる