黒のレディス・スーツをスタイリッシュに極めたモデル並みの女性が高畑と供に歩いてきた。ライトオン・プロダクションのビルにあるロビーだ。 橘と昭雄は所属しているタレントや歌手の大型パネルに魅入られて全く気がつかない。 美鞘だけは、すぐに気付き、彼等が目の前に来るまでじっと目を離さず、その女性の一挙一動... 続きをみる
2022年3月のブログ記事
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それから数日間がなにごともなく去り、美鞘はいつものように昼休みの図書室に行くと昭雄が既に居た。「よっ!早いね」と手を上げて同じテーブルの椅子に座る。「実は昨日橘さんから連絡があったんだ。携帯で電話かメールを送ろうと思ったけど、急ぎでもないし会って話そうかと思ってね」図書室にはいつも通り、殆ど利用者... 続きをみる
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「ところでさ、美鞘ちゃん。剣術の練習はどうしてんの?」と橘が訊いた。「え~と、ですね。今の学校には女子剣道部がないんですよ。だから放課後一旦家に帰り、日が沈むまで人気のない場所まで行って、やってます」淡々と答える。「あ~そうか~。でもひとりだけで練習していても上手くならないんじゃないの?相手がいな... 続きをみる
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「おっ、そうだ」橘は携帯を取り出した。昭雄は未だにスマホではなくガラケーの携帯を使っている橘を見てホwwッと声に出さず息を吐いた。(私もガラケー^^) 「早速高畑さんに電話で訊いてみるわ」ふたりは頷く。ボタンを操作し耳に当てて暫くすると、高畑が電話に出たようだ。 「あwwもしもし、橘です。先日はど... 続きをみる
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昭雄と美鞘は同じように小首を傾げ眉根の中央に皺を寄せた。橘は話を切り、正面からふたりの表情を面白そうに見ている。 先に、もぞもぞとぎこちなく肩を揺らし口を開いたのは、やはり昭雄であった。言われた事を一旦プールして、自分なりの考察をはしょるタイプだ。 彼の場合、答える相手が居るのなら訊けばいい。とり... 続きをみる
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「まだ数ヶ月しか経っていないからお前たちの記憶に残っていると思うが黄色のダイバー・スーツのようなもの着た女性が、人並み外れた脚力、跳力を駆使して国道を走り抜け、それを目の当たりに見た市民をパニック状態にした。興味を持ったメディアが目撃者の証言をもとに辿っていくと、角川市の野花公園から双葉神社まで約... 続きをみる
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9時50分、昭雄は『喫茶ドンとコイ』に着いた。自転車を店の玄関脇に停める。店主の手作りなのか、厚めの板に墨で黒々と極太の文字が躍っている看板がドアにぶら下がっている。現在駐車場には見たことのあるオンボロの軽自動車が一台と、店主の物であろうライトバンが一番店から離れた所に停めてある。 中に入ると店自... 続きをみる
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橘が昭雄に今週の日曜日に会えないかと電話すると、即ОKとの返事が返ってきた。(こいつ、余程暇を持て余してるんだな~。そういえば俺が立哨している時、挨拶代わりに『何か面白いことないですか?』だもんな~)一度署長に注意を受けてから、長話しはできなくなったので、最近ではお互いに心得ている。空手の練習日ま... 続きをみる
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橘が家路に着いたのは午後5時前。家路といっても安アパートに、だ。実家は北海道の登別。自然に溢れてると云ったら聞こえはいいが、何もない辺鄙なド田舎だ。そんな所に嫌気が差して中学を卒業して直ぐに長野の親戚の家に下宿したのだった。両親は健在で、農業を営んでいる。時々は、橘のもとへ森で狩をした鹿や熊の肉を... 続きをみる
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イブは全く不本意だと思った。突然現れた橘と云う警察官によって、どんどん目的が脇道に逸れてしまう。イブ的にはキリクノにグリーン・ビッチ製の剣を持った少女の素性を訊きたいだけなのだ。この事務所に出入りしているだろうから、玄関前付近で何気なく待っていて、彼女たちが現れたら話しかけようと思っていた。その機... 続きをみる
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「いや、どうもお待たせしました」応接室のソファーに座っている橘とイブに声をかけ、高畑が対面のソファーに掛ける。 彼等が書斎をでて5分ほど、殆ど待っていると云うほど時間は経っていなかったのだが。 「社長と相談した結果、採用させて頂くこととなりました」そういってイブの反応を見る。 なるほど、殆ど表情に... 続きをみる
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未無来がスクランブル交差点で観たトピックを、同日の夜遅くに放送する報道番組でイブも観ていた。 イブは自分が勤めているスーパーで、あの怪物の来訪を受けた日以降、ニュースや報道を常に神経を尖らせみていた。 イブのなかの赤い石は、未無来が宇宙的に恐れられる『グレート・デストロイ』と同一の生物だと瞬時に認... 続きをみる
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暫くの間ギターやパーカッション、シンセサイザー等の調節音が聞こえて来て、(おおー、間もなくやな~ワクワク)という心境。「皆さん!長らくお待たせ しましたー!キリキリくノ一隊の登場です!盛大な拍手でお迎えくださいー!」 照明が消されて暗闇だった舞台が、突然大音響と色とりどりのレーザー光線によって、一... 続きをみる
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刀に疑惑が及ばず一先ずホッとしてお互い微笑んだところで、開場となった。ガードマンの指示に従い、順次入って行く。割り込む者も無く皆礼儀を わきまえている。ガードマンは橘と顔見知りらしく、顔を見るなり敬礼をした。 橘のグループと言う事でノーチェックで入れた。指定の座席はいわゆるカブリツキ (正面、最前... 続きをみる
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昭雄は思ってもみない絶好のチャンスが訪れたと思った。チケットを片手に美鞘に電話した。美鞘もとても喜んで、どんな事があっても必ず行く~!なんて、はしゃいでいる。 美鞘は単純にコンサートを観に行ける事が嬉しいのだ。まっいいか~と昭雄。 『キリくノ隊』のライブ・コンサートは観客のコスプレで有名なのだ。忍... 続きをみる
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昭雄は美鞘の目をじっと見つめて聞き入った。そして美鞘が飲み物を口に運んで一息着いたのを見て、微笑んでこう言った。「美鞘さん。僕で良けりゃあ喜んで協 力させてもらうよ, どんな些細なことでも遠慮なく言ってくれていいよ。」「おそら く途轍もなく強い相手だと思うけど、その剣の力さえ発動することが出来るな... 続きをみる
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気がつけば、太陽は二人の真上から強烈な光射を降り注いでいた。幾ら木陰に居てもちょっとキツイ。「暑いね~!北見さん、僕ん家に行こうか~.。此処よりかマシだよ?」「え?」ちらっと家を見た。(どうしようか~?)「用事ある の?」っと昭雄。「僕、母さんと二人暮らしなんだけど母さんパートに行ってて 居ないん... 続きをみる
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美鞘はワザと(やれやれ・・・)という顔付きをして立ち上がった。 昭雄はニコニコ笑って目を輝かせている。ガッツも嬉しそうに尻尾を振っている。 「じゃあ、やるかー!」」美鞘は気合の入った声を上げた。何が始まるのか 浮き浮き顔で昭雄が観ている。美鞘は「シュッ」と剣を鞘に収めた。すると柄と鞘との境目が溶け... 続きをみる
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晴れ渡る空、木漏れ日の中。早朝の爽やかな、そよ風が心地よい林の中に美鞘は背筋を伸ばし立っている。小鳥が楽しそうにピーチク囀ってる。 両手を大きく広げ深呼吸を数回・・・空気が体に染み込む様だ。(美味い!)目を閉じ無想・・精神統一。あらゆる概念が消え自分自身のみになる。 「よし!」目をひらく。少しず... 続きをみる
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はや夏休み~! 引越しや転校した学校、ご近所の挨拶回りやお付き合いなんかで、瞬く間に月日が過ぎていった感がある。やっと落ち着いたと思ったら夏休み。 でもこれっていいかも~。月光の剣を試す時! 学校から帰って家に居る時は剣を片時も離さないでいた。自分の一部と化、しようと心掛けたのだ。間違いなく近い将... 続きをみる
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一体どうなっているのか?抜き身自体が色光を放っている。不思議で魅力的なそのやいばに一同は目を奪われた。ハッと我に返った美鞘が、 皆に「もうここを出よう。」と促した。お昼前、暗い祠から急に明るい所に戻ったので、皆一様に目を細め顔をしかめた。ふと美鞘はこの剣がどれほどの切れ味を持っているのか試してみた... 続きをみる
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「こんちわ~」店の戸をガラガラと開けて立山が奥に声を掛けた。すぐに冴子の返事があり居間のガラス戸が開いた。「どう?無事だった?」いつになく真剣な表情で全身を見回してくる。立山は苦笑しながら「ああ、何とか五体満足で帰って来られたよ。危ないところを龍二さんに助けてもらった」「龍にいに?へ~!」「だが清... 続きをみる
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とりあえず立山は家に帰った。まだら組の事務所に随分長い時間居た気がしたが、一時間も経っていなかった。外食しても良かったが昨夜、妻の幸恵に話してあったから心配しているに違いない。携帯で無事を告げても良かったが、ハヤテを迎えに行くのには早すぎる。一旦、家に戻って出直しても充分間に合うし、無駄なお金を使... 続きをみる
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美鞘が選ばれし者だと分かった日から、継子は美鞘をどのように育てていけばよいのか日々悩んでいた。そんな親の思いをよそに、娘は日を追う毎に心身共々すくすくと成長し、目を瞠る程に輝きを増してくるのであった。小学校を卒業する頃には、並みのアイドル顔負けの端整な容姿を備えていた。本人はそんなことはお構い無し... 続きをみる
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今更すみませんm(_ _)m。下書きのままでした。残念ながら継正は選ばれし者ではない。月光の様に変化する抜身を一度でも観てみたいと弟子たちを、また集合させて両端から綱引きの要領で引っ張ったがピクリともしなかった。第一にツバがないから柄と鞘との境目が分からない。どれ程丹念に視ても一本の杖としか思えな... 続きをみる
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継正は毎夜異星での夢を見る。江戸時代宇宙に対してどこまでの知識があったかは分からないが、幸いにも継正は物事に柔軟な考え方が出来るのか、 受け入れるのは早かったようだ。だから異星人を認めたし、彼からの話の内容も信用した。異星人から止められたことがひとつ。書き物として残さない事。第三者の者が開封して大... 続きをみる
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継子(けいこ)は話を整理するように、少しの間押し黙った。皆はそれが伝わったように口を開くのを待っている。父の正男は運転中だから、話にのめり込み過ぎないように自身にセーブを掛けて、時折ナビの画面を視たり窓外の景色を意識して眺めたりしている。 「そうね~、まずはご先祖さんが異星人から授かった武器がどう... 続きをみる
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「ちょ、ちょっと待って、お母さん!」美鞘(みさや)が、後部座席から身をのり出す様に母の話を止めさせた。 「あっ、ごめんなさい、話の途中なのに。ちょっとパニクっちゃって・・・」そう言いながら元の位置に座り直す。 「その話、私がその宇宙から来た怪物と戦わなきゃならないわけ?まさか、冗談でしょ?だってお... 続きをみる
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「俺の提案とはこうだ。今日の所は立山を帰してやる。だが、ただ帰すのではなく伝言役を引き受けてもらう。そこの調子もんの甥っ子が言っていた学生を研究所に連れて行くから明日の・・・そうだな社員を皆帰してからの方が何かと面倒掛からないから夜7時に引き取りに来いと息子に言うんだ。足がないから、立山、お前が乗... 続きをみる
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龍二が話した最強なる息子というのを一同がそれぞれに想像しだして、室内は静寂に包まれた。静寂を破ったのは又しても秀也の声だった。「叔父貴ー!誤魔化されてはいかんぜー。そいつは、そのおっさんを助けたいばっかりに嘘をついてるんだ。俺だって多少は知ってるんだぜ。龍二とおっさんは古くからの友達なんだってこと... 続きをみる