takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

清志が消えた・その15

「こんちわ~」店の戸をガラガラと開けて立山が奥に声を掛けた。すぐに冴子の返事があり居間のガラス戸が開いた。「どう?無事だった?」いつになく真剣な表情で全身を見回してくる。立山は苦笑しながら「ああ、何とか五体満足で帰って来られたよ。危ないところを龍二さんに助けてもらった」「龍にいに?へ~!」「だが清志は還してもらえなかった。あっ、ちょっと込み入った話なんだ。上がらせてもらっていいかな?」「あっ、ごめん気が利かなくて。お茶でも入れるわ。コーヒーがいいかな?」「ん~ん、じゃあコーヒーで。麗美ちゃんは学校か?」「そう、学校ー」奥のキッチンから声がする。つけっぱなしのテレビからカツラを着けてると噂の有る司会者が陽気にしゃべっている。『ところでね~、今注目されてる未無来製薬の栄養ドリンクがものすごく注目されてるね~!皆さん、知ってましたか~?』観客が一様に大きくうなずいている。それを、立山が観るとはなしに見ている。冴子が盆にコーヒーとちょっとしたおつまみを皿に載せてテーブルに置き、「どうぞ」と立山の目の前にカップを置き直した。冴子は急かすことは控えて立山が一くちコーヒーを口に運ぶまでは黙っていた。カップを置いた立山が「やはり清志は匿われていたよ。逃げられないように裸にされてた。可哀そうに神経をすり減らしてギスギスになってた。」「まw、酷い事するのね」「で、すぐに連れて帰ろうとしたがそんなに簡単に行くわけもなく、条件をのまされた」「条件?」「ああ、もう対班目じゃあなくなった。途中から龍二さんに仕切られてハヤテ君との一騎打ちの提言となった」「え~?!」冴子がのけ反って驚く。「えらい事になったわね~、班目はよく黙ったわね」「龍二さんが言い出したら誰も止められないさ」立山が薄く笑った。「もう、やるしかないところまで来たって訳ね」「ハヤテ君も決死のダイビングで翼での飛翔のコツを掴んだっていうし、全くの不利と言う訳でもない。明日の夜7時に班目研究所で一騎打ちを条件に清志君を引き取る約束だから」しばらく黙ってうつむいていた冴子が「わかったわ、私たちも覚悟を決めましょう。勿論まるちゃんは決死の覚悟で挑むでしょうが、私たちも一心同体でまるちゃんをフォローしましょう」立山もその意見に大きくうなずいた。