takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

2022年2月のブログ記事

  • 清志と秀也・その5

    秀也は給水塔の土台のコンクリートに腰かけ、両手をあごの下で組んで、清志が近づいて来るのを見ている。清志は近づくにつれ、恐怖心が芽生えてきた。一歩一歩が、とても重い。自然に諤々と膝が震えてくる。自己暗示もどこかに飛んで行った。それでも、ようやく目の前まで行くと「用事ってなに?」と、言えた。秀也はそれ... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その4

    弁当をたいらげ「ふ~」と一息吐いて前を見ると、いつの間にか秀也が席をたっていた。 それに気がつかなかった自分に、彼に対して神経過敏でないことは良い兆候だと安堵した。 いつも清志は、弁当の後は机にうつ伏して昼寝をするか、次の授業の予習をする。昨日休んだ分を取り戻すため、教科書を開いた。すると、ポケッ... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その3

    清志が教室に入ると既に秀也は居て、横向きに座り隣の男子と雑談をしているところだった。 秀也の後ろが清志の席だ。通路を長い足でせき止められている。清志はその前で立ち止まり「おはよう。」と声を掛けた。秀也は、その声で初めて気が付いたように足を引っ込め「あっ、おはよう。体の具合は、もういいのか?」と、一... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その2

    清志は以前の体調に戻った喜びを噛みしめながら学校に向かっていたが、それと同時に大きな難問が待ち受けていることが分かっているから、弱気にならないよう自己暗示をかけ続けた。(秀也なんか怖くない。同い年じゃないか。負けない、負けるもんか!)だが、あの体格と腕力では、いざとなったらとても太刀打ちできない。... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その1

    清志はいつも通り7時過ぎに起床した。前夜に飲んだ松本病院の錠剤が本当に効くのか不安で、なかなか寝付けなかったが起き上がってみると、何の違和感もない。(効いている・・・。間違いない)これも皆、冴子さんやハヤテ君たちのお陰だと、心から感謝した。「清志~!起きてる~?」母の呼ぶ声がする。「は~い!」自分... 続きをみる

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  • ハヤテ、山での修行を思いつく。2

    一本歯下駄に指を通しながら「ちょっと出かけてきます。」と店を出たのが10時前。店の前は、本道から外れた枝道だから車の行き来も少ない。しかも通勤時間帯はとっくに過ぎている。ハヤテは、のんびりと街並みを眺めながら歩いている。本道に入ると、さすがに騒音が激しくなる。山を下りた当初に受けたカルチャーショッ... 続きをみる

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  • ハヤテ、山での修行を思いつく。1

    次の日の朝、ハヤテは心地よい気分で目が覚めた。昨夜の夢が、鮮明に蘇ってくる。(じいちゃんが天国から僕を応援してくれてる。たぶん母さんも)カーテンを開けると、朝日が差し込んでパーッと部屋を明るくした。窓を開ければ、爽やかで新鮮な空気が風と共に入ってきた。おおきく深呼吸しながら、(そういえば、此処に来... 続きをみる

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  • イブ#その41

    歩いて10分程でスーパーに着く。着くまでに歩美は思いつくままイブに質問してきた。 ホームレスしていた以前は何処にいたとか、歳は幾つだとか、親は何処にいるとか・・・。 殆ど答えられない。苦笑を返すばかりだ。歩美も最後は音をあげて黙ってしまった。 スーパーは年季の入ったと云うべきか、ガラスには隙間がな... 続きをみる

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  • イブ#その45

    イブはレベル2にセットしてジャンプした。普通なら砂浜か波打ち際に落ちて、その周辺にいる人々を巻き込む二次災害の恐怖が、見上げている者の脳裏をかすめたのも頷ける。その頃、弘と歩美はビーチ・ボールに夢中で気付かなかったが、均は何か胸騒ぎがして監視台の方を見たところだった。(あちゃww!何、やらかしてん... 続きをみる

  • イブ#その44

    いつも買い物に行くスーパーマーケットの隣にあるバス停まで、それぞれがバッグやらクーラーボックスに楽しみを詰め込んで歩いていく。途中で歩美のリュックをイブが持ってあげた。バスに揺られて30分、大きなソテツの木が道路の両側に並び、葉が潮風に心地よさげに吹かれている海岸前の停留所に停車した。真っ青な空は... 続きをみる

  • イブ#その43

    夕食後、弘は早朝と云うか深夜と云うか、午前2時に起きて新聞配達所に出勤しなければならないので、風呂に入り寝るために早々と自分の部屋に戻った。他の3人は台所で雑談に講じている。「弘さん、頑張っているんですね。」イブが言うと「ああ、随分助けてもらってる。」と、均が今しがた出て行ったガラス戸に目をやりな... 続きをみる

  • イブ#その42

    買い物から帰り、ふたりはキッチンに入る。一応古臭い流し台が設備してあるし、電子レンジやオーブントースター、ガスレンジもある。イブはそれらの一つ一つを観察するようにみた。人工頭脳が解析を始めている。「イブさんはお料理したことあるの?」買い物袋からテーブルに食材を移しながら歩美が偉そうな事を言う。買い... 続きをみる

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  • 葛籠・その5

    その夜、夢の中にじいちゃんが現れた。それを夢とは思えぬほどのリアリティーで、ハヤテはみていた。 ハヤテは日和山にいた。なぜか冴子に買ってもらった厚地の黄色いシャツを着ている、幼い頃の自分がいる。 土間にしゃがみ一本歯下駄を履こうとしているハヤテに、囲炉裏にあたって赤ら顔のじいちゃんが声を掛ける。「... 続きをみる

  • 葛籠・その4

    天狗の面を被ったハヤテは、呻き声を発しながらその場に蹲ってしまった。その背中が小刻みに、打ち震えている。冴子と麗美はいきなりの出来事にしばらくの間、動くことさえできなかった。が、はっとして目が覚めたように冴子が駆け寄り、背中を摩ろうとした。しかし白い羽根が邪魔だったので、腕を触ってハヤテに声を掛け... 続きをみる

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  • 葛籠・その3

    麗美が宿題を終えて、二階から降りてきた。もう夜の8時だ。居間にあるテレビのリモコンを取ってテレビに向け電源をオンにする。チャンネルを次々切り替えていたが、気に入った番組がないのかオフにしてポイっとテーブルに投げ捨てる。「あ~あ、つまんないー」両手を頭の後ろに組み、口を尖がらす。ふと、母親の冴子が妙... 続きをみる

  • 葛籠・その2

    その夜、ハヤテは新聞紙が敷き詰められた真ん中に、ちょこんと座らされていた。特大の青いビニール袋の底に穴が開けてあり、頭からスッポリ被せられて穴から頭部だけが抜け出さている。冴子が、シャキシャキと鋏を鳴らしながら、ハヤテの髪形をどうしようかと模索中。(まずは、この長い尻尾をバッサリやるか~?ケッケッ... 続きをみる

  • 祖父の残した葛籠(つづら)・その1

    いつの間にか太陽は西に傾いて茜空となっていた。「何かあったの?」と、好奇心で目がぎらついている立山に、冴子が事の成り行きを短くまとめて話して聞かせた。 立山は「へー!」とか「あ~そう!」とか合いの手を入れながら、やけに楽しそうだ。「・・・っとまあ、こういうことだったのよ。」冴子がやれやれ疲れたわと... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その18

    「私は随分と悩みました。大学4年生になっていて、周りは皆、就活に励んでいます。今になってマルサンから方向転換は、目標を失うことに等しい。ですが、現状を見ると入社できたとしても魅力の持てない箱の中で、終身勤め上げなければならない。もしかして、喜びも見つけられず苦痛だけの日々を定年まで続けなければなら... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その17

    伊藤は少しイラついていた。店長の大学生時代の話はいつまで続くのかと。祖父の偉大さは赤の他人に言われなくても俺はよ~く解っている。今は時々しか会う機会がないが、幼少の頃はとても可愛がってもらった。祖父から直接仕事の話なんか子供の自分には話すわけがなかったが、両親から事ある毎に偉業を聞かされ育ったから... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その16

    「私はね~、大学生になりたての頃、本屋さんで何気なく一冊の経済誌を手に取ったんですよ。ほんとに何気なく、ぺらぺらと流し読みしてました。 そして中ほどのページで手が止まったんです。独占インタビューの記事でです。頭の禿げ上がった如何にも人の良さそうな初老の方が写ってました。タイトルには『小さな雑貨店か... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その15

    薄暗い通路を通り、冴えない表情の伊藤が事務所に入っていく。社員たちは、いつもの様に机に向かってパソコンの操作や、打ち合わせをしているが、雰囲気がいままでと違っていると感じた。それは、伊藤が入室した途端に変化したものだと気付く。(皆が俺を意識している。すでに俺の素性が広まったか?) 「おい、北村~。... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その14

    ふたりを乗せた車があざ笑うように伊藤の目の前を通り、走り去っていった。ドアの外に出ていた社員や野次馬達も、ひとりふたりと店内に戻って行く。 悔しさに唇を噛み締めていた伊藤だったが、何かを思いついたように従業員通用口の方に駆け出した。従業員通用口は、ひと気のない店の裏側の一角にあった。従業員のみが出... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その13

    レンタカーの適度にエアコンが効いている車内でシートを倒し、立山は両手を頭の後ろで組んで目を閉じている。 清志は、デパートの正面玄関の方を呆然と見て冴子らが出てくるのを待っている。 「あれ?!立山さん!あれ、響さん達じゃないいですか?」その言葉に立山が体を起し、出入り口を見た。「何か、変じゃないです... 続きをみる

  • 新型コロナワクチン3回目行ってきました。

    前回と前々回はファイザー、今回はモデルナ。以前同様、当日と次の日腕に鈍痛がしていたがそれも治まった。人によれば高熱が出て2.3日寝込むものもいるという。イヤミな同僚と話すと、接種後の体調が軽い者は効き目が薄いかも知れんぞと何の根拠もなくのたまった。こう言うデマを流す輩が少なからず居る。そう言う者に... 続きをみる

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  • イブ#その40

    「お兄ちゃん?」歩美が居間に入ってきた。部屋の空気が重いと感じ2人の顔を交互に見ながら「どうかしたの?」と訊いてきた。均は、「あ、いや・・・。どうして?なんか用かい?」歩美を見る。 「勉強、一区切り着いたから、夕飯の買い物に行って来ようと思って。冷蔵庫の食材、残り少ないから」均に言い、イブに笑顔を... 続きをみる

  • イブ#その39

    「私の体を造ってくれた博士は、何故か消息を絶ってしまったのですが・・・」 「私を救助用ロボットとして確立したかったようで、その存在を世間に知ら示める意味合いで、一般路上を走破させたのかも知れません」イブはそう言って、まだ論評を展開しているテレビを観た。「こういう騒動になることを想定していたのか、考... 続きをみる

  • イブ#その38

    「おそらく・・・」イブは小首を傾け、斜め45度から悪戯っぽい目で均を見ながら言った。 「宇宙から飛来した謎の物体に、この星を乗っ取られると危惧している?」図星だった。 (テレパシーで俺の考えていることを読んでいるのか?)冷や汗が背中をひと筋流れた。驚愕で目を見開いている均に向かいイブは柔らかい眼差... 続きをみる

  • イブ#その37

    「私の星にも地球の様に動ける生物はいたの。でも言葉では伝えない。体には喉とか口がないから。この国で言う思念、テレパシーを使うのよ。そこで私は神に奉れていた。私は動けないけど彼らを使って治めていたの」まるで空想の世界だ。にわかに信じ難い話を目の前の女性型ロボットが淡々と話していく。「数10年後に巨大... 続きをみる

  • イブ#その36

    「単刀直入に訊きますが・・・テレビに映っている謎の女性、あなたじゃないですか?」弟妹が出て行った後も、しばらく無言でどう切り出そうか迷っていた均だが、意を決して言った。 ひとつ間違えば人権蹂躙で訴えられかねない発言だが、彼には確信があった。 じっとイブの目を見詰める。(これは目なのか?目に似せた、... 続きをみる

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  • 民謡ってすごいと思う。

    今、ユーチューブで民謡日本一の朝倉さやさんがjーポップを東北弁で歌っていて話題になっている。その声は3オクターブは有るだろうし高音部も涼しい顔で難なく出せてるのに驚く。私の幼少の頃は三橋美智也さんが民謡上がりで素晴らしいのどを披露し、ヒット曲を連発し、有名どころでは金沢明子さんや細川たかしさん。み... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その12

    冴子は事務所の扉を開け放ち一段と歌声を張り上げた。冴子の歌声を聴かせて眠らせる能力は、移動する際には不利となる。 歌声が届かなくなれば、術にかけられていた者はすぐに目覚める。現状を取り戻す時間は個々によって違い、普段の寝起きとほぼ同等だ。 だが目覚め後も、いきなり眠ってしまったというショックと夢の... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その11

    伊藤が、いきなり専属キャラクター云々と口走ったので冴子たちより店長がびっくり顔で彼を見ている。目の前に置かれたコーヒーも目に入らないようだ。 「い、伊藤君、そりゃあ先走り過ぎだよ~。海のものとも山のものとも・・・いや、失礼。と、とにかく何の肩書きもない君が勝手に推し進めることじゃないよ。今日のとこ... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その10

    窓際の上座に冴子、その隣にハヤテが居心地悪そうに座っている。冴子の前に店長がお飾りで座らされ、伊藤だけがやけに満面笑顔でふたりを見つめている。ふたりの前に名刺が差し出されている。名刺にはマルサンデパート如月支店・店長 里中秀雄とある。「こちら店長の里中です。」と伊藤が紹介すると、営業的な作り笑いを... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その9

    立山はシートを少し倒してぼんやり車外の景色を見ている。太陽の光で何もかもが白っぽく映っている。(働き口を早く見つけないとな・・・) トントンとリヤ・ウインドゥを叩き、顔を向けると清志が覗き込んでいる。体を起し、少し開けて「開いてるから入れよ。」と、声をかけた。 後部のドアを開け、座席に座るなり、「... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その8

    一方、冴子とハヤテはまだ柱の影に潜んでいた。一度出掛かったが、冴子が何を思ったのか直ぐに引き返したのである。 ハヤテの耳から栓を外し、「まるちゃん、作戦変更するわ。これだけ大勢の人達を眠らせたら、間違いなくけが人が出るわ。見て。あそこにエスカレーターが動いているし、こちらに幅の広い階段がある。エス... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その7

    店長は思わず両肘をデスクにのせて手を握り、その上に顎を掛けてため息をついた。伊藤の提案をのんでしまった自分が情けないこともあるが、今後の展開に不安を感じずにはいられなかったからだ。店長は頭の中で若手社員の伊藤とは、どういう社内評価なのかを思い浮かべた。確か伊藤は入社5年目で、過去に本社勤務の経験も... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その6

    「やばいことになっちまったなww」2Fの通路をひた走りながら、目を皿の様にして冴子を探すハヤテ。 ふと、目の端に何かが引っかかった。急停止し、よく視ると婦人服売り場の柱の影からニョキッと腕が出て手招きしている。 (もしや、あれは・・・!)ハヤテは柱の影に近づいた。やはり、冴子だった。姿勢を屈め「「... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その5

    この大型ショッピング・センターは広大な立地面積を誇るが高さは然程ない。階は1階と2階だけだ。1Fは西から電化製品や靴屋、本屋、軽食・ファースト・フード店があり、東側に薬や化粧品売り場。そして最も大きくスペースをとり食料品売り場がある。それらの中央に位置する所にイベント広場があり、土、日祝祭日には幼... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その4

    「ふー!」と大きく息を吐き「まっ、これで取りあえずはいいでしょ!」と満足げに微笑む冴子の横で、大袋を両手に提げて疲れ切ったハヤテがいる。 「パンツの裾直しは後日になったけど、また立山さんを頼むか、それが無理ならバスでも来られるから。」ねっ、とハヤテに笑顔を向けた。 適当に頷いているハヤテから目線を... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その3

    やがて一同は郊外にある大型ショッピング・センターに着いた。広大な駐車場と、どっしりとした存在感のある建物。遠くからでも見える大きな看板。 ハヤテは「わ~すげww!僕が住んでた日和山よりでかいんじゃないんかな~!」と、思わず感嘆の声を上げた。 そして、色とりどりに空に浮かんでいるアドバルーンを興味深... 続きをみる

  • イブ#その35

    依然、均が俯いたまま黙っているので微妙に白けた間ができてしまい、各自無言でテレビを眺めている。『・・・・いまだに足取りはつかめていません』画面では投稿者による動画の再生を次々と映し出し、5人の解説者があーだこーだと講釈を垂れている。対象となる者の映像はどれも鮮明でなく、特に近距離撮影に至っては高速... 続きをみる

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  • イブ#その34

    「あっ、そうそう。イブさんのショルダーバッグも汚れていたから、よく絞った濡れ布巾で拭いたけどよかった?」歩美がイブに言う。「・・・・あ、はい。・・・どこに置いてくれましたか?」「洗濯機の横の台の上に。持って来ようか?」「すみません、お願いします」オッケーと言って身軽な動作で歩美が部屋を出て行く。そ... 続きをみる

  • イブ#その33

    玄関の掃除を終えて気だるそうに居間に入る。弘と歩美がコソコソ小声でなにか話している。 均は既にお笑いが終わってニュースをやっているテレビを、何気に観ながら胡坐を組んだ。それを待っていたかのように、2人が均に話しかけてきた。「兄ちゃん、あの人普通じゃないよ。服着たままシャワー浴びてたんだよ」歩美が均... 続きをみる

  • イブ#その32

    イブと歩美が風呂場に行く。古い建屋だが一応シャワーがあり、歩美は使い方をイブに教えている。「操作の仕方わかる?」「いえ、解かりません」「そう?色々なタイプあるからね。」1から説明をするのだが、操作方法と云うよりボタンひとつレバーひとつに初物を見る様な仕草をする。(この人、シャワー浴びた事ないのかな... 続きをみる

  • イブ#その31

    と、その時目の前で女性の声がした。「ありがとうございます、もう大丈夫です」 今まで棒状になっていた体は、しなやかさを取り戻し密着している均に息づかいや心臓の鼓動まで伝わってきた。イブは両足を曲げ正座して弟妹を見ている。均はあわてて腕を解き、イブの前方にまわり込んだ。イブは視線を均に移し、「迷惑をか... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その2

    軽く昼食を摂った後4人は車に乗って郊外の大型ショッピングセンターに向かった。ハヤテの身の回りの物を買うためだ。 「清志君、本当に帰らなくてもいいの?あなたを送ってから出直してもいいのよ。」と、冴子が言う。 「いえ、いいんです。たまには僕も楽しみたいんです。一緒に連れって行ってください。今回のことで... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その1

    『喫茶サンシャイン』で話しているうちに昼前となり、軽食をオーダーすることにした。 冴子はミックスサンドセット。サンドウィッチにコンソメ・スープが付いてくる。立山はミート・スパゲティのセット。これもスープつき。 清志とハヤテは少しボリュームのある、ハンバーグ定食のライス付。食事中は話す言葉も少な気で... 続きをみる

  • それぞれの過去・その6

    「その頃俺は22歳だったから龍二さんはひとつ上の23歳。斑目は30歳を越えてたんじゃないかな?普通で考えりゃぁ、修羅場をくぐって凌いでいるあの組長や斑目などの組員からしてみれば、口を利く事さえも許さない一般庶民のただの青年。その彼に、たった一夜の数時間でわけなく仕切られてしまった。 鞍馬一族の者か... 続きをみる

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  • それぞれの過去・その5

    「じゃあちょっとあちらに行こうか。彼らも落ち着きを取り戻したみたいだからな。」龍二がスツールから降りた。それを立山が横目で見ていると、 「何している、お前も行くんだよ。」と、龍二が声を掛けた。(えっ?俺も?勘弁して欲しいな~)と、思いつつも逆らえるわけがない。言われるままに後に続いた。「親分さん、... 続きをみる

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  • それぞれの過去・その4

    皆は再びクラブに戻った。いつの間にか一般客は居なくなっていた。ママが帰したのだろう。元のテーブル席に組長と若い衆がふたり。龍二と立山も元の止まり木に座って、斑目だけが出口に近い一番端の止まり木に移動して死人の様に俯いたまま微動だにしていない。 立山が他の者に聴こえない様に龍二の耳元で囁くように話す... 続きをみる