takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その39

「私の体を造ってくれた博士は、何故か消息を絶ってしまったのですが・・・」
「私を救助用ロボットとして確立したかったようで、その存在を世間に知ら示める意味合いで、一般路上を走破させたのかも知れません」イブはそう言って、まだ論評を展開しているテレビを観た。「こういう騒動になることを想定していたのか、考えが甘かったのかは本人に訊かなければ解からないことなんですが・・・」均に向かって苦笑する。「私としても人助けには賛同してます。しかし前もってのプロジェクトなら未だしも、緊急時に駆けつけるとなるとその行動範囲は精々半径10キロ程度、たかが知れています。人命救助の為の機関は多々ありますが、そんな所に日々詰められるのなら拒否します。この体は私に与えられたもの。私自身の意思で動かします」イブの目に強い光が見えた気がした。「私の星は殆ど光の届かない極小さな惑星で、私は自ら高エネルギーを生み出す力があったものですから私を中心に都市が栄えていきました。テレパシー増幅装置が作れる程の資源や技術力もあったのですが、そこでの私は神でしたから不動でなければならなかった。それは永久的です。自らは動けないのに、永遠に生き続ける存在を当たり前と受け入れていたのです」消滅してしまった故郷を思い出しているのか目を閉じて話した。「だけど、こうして動けることの喜びを知って私は変わったのです。自由に動ける事の素晴らしさは、それが普通のあなた達には解からないでしょうけど」イブは均を見てうふふと含み笑いをした。