takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その38

「おそらく・・・」イブは小首を傾け、斜め45度から悪戯っぽい目で均を見ながら言った。
「宇宙から飛来した謎の物体に、この星を乗っ取られると危惧している?」図星だった。
(テレパシーで俺の考えていることを読んでいるのか?)冷や汗が背中をひと筋流れた。驚愕で目を見開いている均に向かいイブは柔らかい眼差しで言った。「この星に来た時、テレパシーは使えなくなったわ。でも不自由はしてない。人工頭脳を使って話せるからね。博士は、人間として生きる全ての基本データーを頭脳にインプットしてくれた。私はその時々でそれを引き出し、学んでいくの」「私はこの地球という素晴らしい星で人として生きて行きたいの。そしてささやかながら、何かの時はこの強靭な体を世の中の為に役立てたいのよ。それはこの殻を造ってくれた博士の意向でもあるしね」安心してと云うように優しく笑った。均は束の間ほっと胸を撫で下ろしたが、全てを信用して良いものなのかとの不安が、依然心の片隅に残っている。「それでこれから貴女はどうするつもりなんですか?」と訊く。「私はあなた達とここで暮らしたいです。失礼ながらあなた達のおかれている状況、過去の出来事・・・その殆どの情報を知ることができました。そして私は、貴方とその家族が好きになってしまった」えっ?というように均が驚きの表情をする。「あっ、ストレート過ぎましたか?まだ人間になりたてなものですから・・」「でもこれは嘘偽りの無い本心で言っています。私はあなた達の為に役立ちたいし、あなた達の笑顔を見ていたいのです」真剣な眼差しでイブに見詰められ、どうしたものかと均は考え込んでしまった。