銃声音は大して大きくなかったから付近の住民は花火かタイヤのパンクぐらいにしか思ってなかったのだろう、誰一人出てくる気配がない。 斑目が手にしている拳銃は、おそらく護身用の小型拳銃だろう。だが、至近距離から撃ったので殺傷能力は充分にあるはずだ。 クラブのドアが放たれ、立山と幸恵そして組長が飛び出して... 続きをみる
2022年2月のブログ記事
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「世の中つまらんと思い、生きていてもしょうがないと日々過ごしていたが、偶にはこんな楽しめる事もあるんやな~。ストレス溜まってる分チカラも半端なく出せそうや。圭太よ、今の俺は麻雀屋での非力な俺じゃないぜ。こんなクズ共、叩きのめしても本人以外泣く者はひとりとしておらん。むしろ喜ばれるくらいや。」龍二は... 続きをみる
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「おう幸恵、久しぶりだな。」上機嫌の斑目が、カウンターの中で止まり木(一本足のスツール)に座っている立山達の相手をしている幸恵に声を掛けた。 テーブル席で他の客についていたママさんが、驚いた顔をしてあたふたと駆け寄ってきた時には、彼らに続いて5人の若い衆が入ってきたのと同時だった。 ママさんのもて... 続きをみる
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冴子たちのテーブルだけが、暗く閉ざされた空間になっていた。ウェイトレスのお姉さんからしてみれば、早く腰を上げてくれないかと願うばかりだと想像する。だが、当の本人たちにその意識がない。 「だけど・・・龍二さんは、俺にとっては恩人と云っていい人なんだ。」唐突に、俯いた姿勢のまま立山が過去の話をしだした... 続きをみる
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冴子はハヤテを抱きしめながら鞍馬父子の行く末を心底嘆いた。 今の龍にぃには、優しく思いやりがあったかった十代の頃の面影が欠片も見当たらない。たったひとりの実の息子を傷つけ、いや死なせることを目的に執念を燃やし生きている。龍にぃは暗闇に住んでいる鬼のようだ。そして、暗闇よりもっと深い地獄へと進もうと... 続きをみる
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冴子はハヤテを抱きしめながら、祐蔵が香典返しを持参して店(骨董・民芸の店 響)に訪れたときの事を思い出していた。なぜかハヤテを抱いていた。(まるちゃん、龍にぃと一緒に住んで居ないのかしら?)その時ふと疑問に思ったが、その後の、祐蔵の話しを聞いて愕然とした。 「あれは事故じゃったんだよ。産まれて一年... 続きをみる
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父に恨まれている理由を教えてほしいと懇願したことをハヤテは悔やんだ。 体全体が震えだし、意識が遠のきそうになった。「おっ、おっ、おおおwww!」抑え切れない慟哭が、店内に響き渡った。お茶を楽しんでいる連中が(何ごと?)と思わず立ち上がってハヤテを視ている。ウェイトレスのお姉さんが、小走りに目の前ま... 続きをみる
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信長の背から秀吉が降り、「信長、じゃあ頼むよ。」とハヤテが声をかけると翼を広げて信長は飛び立った。 横断歩道のない道路を車の行き来を見計らって渡り、喫茶店に戻った。 冴子らのテーブルに近付くと、皆一瞬ビクリと怯えた顔をして一斉にハヤテを見た。 「ほっ・・。まるちゃん、おかえり。龍にぃが戻って来たの... 続きをみる
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ハヤテは喫茶店の出入り口に神経を集中させながら、信長に声を掛ける。 「信長、今から男の人がふたり出てくる。彼らの顔をよく憶えておくんだ。そして、しばらくの間彼らを見張っていてほしい。彼等が車を出したら尾行し今日行った場所に向かったら、僕に知らせてほしいんだ。」 ハヤテは人の言葉で話している。それが... 続きをみる
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ハヤテが席に着くと冴子が暗い表情をしてハヤテを見た。立山も心配顔でハヤテを見る。 「あの、一番奥の席で、背中を向けているのが、あなたのお父さんよ。」「・・・はい。」双方、承知の上での会話をした。 「さあ、何か飲みなさい。みな、アイス・コーヒーを注文したわ。」淡いピンクと水色が爽やかな花柄のエプロン... 続きをみる
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店は、程好く空調がなされていて、一同は入った途端に心地よい爽やかな気分となった。 先頭で入った立山が、観葉植物で仕切られている各テーブルを素早く眼だけ動かしチェックする。座れば植物と衝立で遮蔽され、ほとんど様子を窺うことができないが、今は立っているから店内の客の上半身だけだが見る事ができた。客は、... 続きをみる
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冴子と清志を乗せたレンタカーは病院の駐車場を出て、公道に出た。 次第にビルやマンションが多くなり、走る車の台数も増えてきたが、尚も立山は走り続けた。 やがて歓楽街と思われる一角に入って行くと、速度を落とした。飲み屋の派手な看板が軒先やビルの外壁に設置されているが、暗くなって誘蛾灯の如く輝き客を誘い... 続きをみる
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清志は、まさかあの薬のせいで幻影が観えているのかと我が目を疑った。なぜなら、待合所から見たあの大きな鳥がまだ車の上に停まっていて、自分達が近付きつつあるのに、一向に飛び立つ気配がないからである。 むしろ、ソッポを向きつつ猛禽類特有の鋭い眼で、こちらの様子を窺っているような気がした。 (普通、野鳥は... 続きをみる
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診察室から出てきた清志はちらっと受付窓口を見、そして待合室に冴子たちがまだいないことを確認しつつ、茶色い長椅子の端っこに座った。 壁に掛けてある大型の液晶テレビは国会中継を映していて野党の共産党議員が、熱弁を繰り広げている。 テレビに目を向けてはいるが観ていない。清志は少し落ち込んでいた。山崎先生... 続きをみる
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「つまりだな、君は現実のなかで脳が創りだした夢を観ていた。心が君の周辺の物を変化させた。これは唯心論の定義みたいじゃないか?」 「だが唯心論や観念論提唱者は、ただ単に唯物論に対して反論材料として用いただけとの風評が強くある。つまり、嫌がらせだ。」 「私としては全て世の中、物体のみ存在し、心や念や精... 続きをみる
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清志の症状を診た脳神経内科の山崎先生は、最初に服用した頭の良くなる薬が、確かに脳細胞から多量のホルモン分泌を促す向精神薬類であることを、概ね認めた。病院にも類似した薬があるという。しかし、薬の作用によって一時的に脳の機能が活発化したところで、長期にわたり影響され続けることはないという。 この病院の... 続きをみる
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冴子は、バッグからスマホを取り出し清志に電話を掛けたが、すぐにあてた耳から離した。「マナーモードだわ。」メールアドレスも登録してあるのか、すぐにキーを打ち出した。その間3人とも無言で居る。途中から冴子と席を変わり、後部座席でハヤテが秀吉をかまっている。 打ち終わったのかスマホから目を離し、「とりあ... 続きをみる
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清志から話を聴いた昨日の今日だ。調整剤が残り少ないことから殆ど無計画に行動を起したが、正面から突っ込むと拙い結果になるかもしれない。 先々、清志が疑われて暴行される危険性もある。「そうね、今日は様子を探るだけで帰りましょう。脇道はあるのかしら?」冴子と立山はカーナビを覗く。「うーん、車がいっぱいい... 続きをみる
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「龍二さんの妻、つまり疾風丸君の母が亡くなり、龍二さんは自暴自棄に陥っていた。その頃俺はまだJA(農協)に勤めていたんだが・・・。 あるトラブルに巻き込まれていた。勤めていると飲み会が結構あって、二次会三次会ってのは、ざらだった。」そこで言葉を切って、「疾風丸君には、少し理解し難いかな?まあ適当に... 続きをみる
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「ぷはっ!何ですか、これ?面白い飲み物ですね。舌にピリピリくる。」「でも、甘味もあってそんなにわるくない。」 そういって、少しずつ飲み込んでいる。(さすが、適応力あるな)と、立山がコーヒーを、飲みながら見ている。 「ここ暑いから、車に戻って飲もう。」冴子の為に、もう1本缶コーヒーを買って車に戻った... 続きをみる
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山崎脳神経内科は市街地から少し離れた、緑の多い環境の良い処に建っていた。 まだ年数が然程経っていないようで、モダン且つ機能美を併せ持った、見た目にも綺麗な病院であった。 診察客用駐車場には、3台しか車は停まっておらず、冴子は、待合に時間が取られる事はないだろうと、ひとまず予測し安心した。 冴子と清... 続きをみる
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立山がパネルを操作しだした。「あ~、出た出た。ここから12、5キロ先だな。もう一箇所は?」清志が「え、と・・・。斑目脳器官研究所・・・だったかな?」と答えると「えっ?!斑目だと!?」驚いたように立山が訊き返す。「何であんなとこに用があるんだ?」語気が荒い。三人は、急変した立山の様子に戸惑った。冴子... 続きをみる
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友人にパソコンからSDカードに入れてもらった歌を聴きながら、海岸を1時間程かけて歩いた。彼と私は同い年で歌の好みもよく似ている。陽水、中島みゆき、大滝詠一などを入れてくれた。彼が言うように、歌を聴きながらだと、ホント全然疲れない。そして最後のアイテムが今日届いた。紫色のリュックサック。これにお茶や... 続きをみる
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立山は店のガラス戸を開け、店内を見渡しながら一度だけここに来た時の事を思い出していた。 あの日はアルバイト先の先輩に苛められ、龍二に辞めることを伝えるために訪れた。あのとき、アンティークで奇妙な品々をたった数分ではあったが好奇の目で眺めた。そのときはただ単に面白いとの印象だけだった。 (俺は何ごと... 続きをみる
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「写真ですか?」居間の小さなテーブルを囲んで、冴子とハヤテが座った。冴子が「ほんと!懐かしい~」と笑顔を見せながら一枚ずつハヤテに渡す。 それは結婚披露宴の時の写真だ。薄々そうじゃないかと思いながら、「どなたの結婚式ですか?」とハヤテが訊く。「あなたの、お父さんとお母さんの結婚式よ。」やっぱりとハ... 続きをみる
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冴子が掃除をしている間、ハヤテは店に飾ってある骨董品やら彫刻品を観ていた。 じいちゃんの木彫りは、ひと目見てわかる。幼い頃から土間や居間で隣に座って見ていたから。 見覚えある彫り物も幾つかあった。(あ~、なつかしいなー)すぐさま、あの頃が蘇ってきた。じいちゃんが集中して彫っている時は、怒っているよ... 続きをみる
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音楽好きの友人がMP3プレーヤー(超軽量ウォークマン?)とワイヤレスイヤホンを買って公園の山道を歩くことを日課としていると聞いて、私も買う事にしました。実はワイヤレスイヤホンはかなり以前に片耳用を安売りしていたのを買い、3か月ほどで不具合を起こし捨てたこともありプレーヤーもポイントでメチャ安いのを... 続きをみる
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