takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

2022年2月のブログ記事

  • イブ#その16

    父が自殺をしたと知らせを受けたのは午前の法律の講座を受けている最中だった。 携帯のバイブに気付き、送信先を見ると母からだった。(何かあったのか?)首を傾げる。今までに一度も掛けて来た事のない時間帯、嫌な感じがした。そっと室外に出て、廊下で通話ボタンを押した。「もしもし?」均が言うが早いか「ひとしw... 続きをみる

  • イブ#その11

    20分後公園の石のベンチで、博士は仰向けになり夏雲を見ていた。途中でイブの背中を力一杯叩き、ようやくスピードを落とさせたが寿命が10年縮まった思いであった。(暴走・・?ふっ、エヴァじゃあるまいし・・・)と、苦笑しながら体を起こす。隣ではイブが背筋を伸ばしフリルの付いた涼しげな白の夏物ドレスと、それ... 続きをみる

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  • 父子の闘い・その3

    「ありがとうございます。」テーブルを挟んで冴子と向かい合うように座ったハヤテは、冷たい麦茶によって露ぶいている硝子コップを手にとって「おっ!」と一声あげて、のどを鳴らしながら一気に半分ほど飲んだ。「あ~っ!うまいー」「体の中に染み渡りますね~」そう言って、冴子に笑顔をみせた。「おいしい?好きなだけ... 続きをみる

  • 父子の闘い・その2

    思えば、鞍馬家の歯車が修復不可能なほどに狂ってしまったのは澄子の事故が切っ掛けだった。 叔父の祐蔵は、狂気の目をした龍二を山から追い出し、強力な結界を張った。それ以来、鞍馬家には何人たりとも足を踏み入れることができなくなった。 身内の春蔵や冴子さえも結界は解いてもらえなかった。疾風丸を龍二から守る... 続きをみる

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  • 最終章・父子の闘いその1

    夜も更け、冴子は清志を帰した。明日は研究所に向かわなければならない。彼の精神的負担はこれまでのことを考えると相当大きかったに違いない。せめて睡眠を充分とって体調だけは整えさせたい。明日の朝、10時までに来ればよいと伝えた。そして、今日娘の麗美が受けた精神的ショックを考え、残念ながら家庭教師は辞めて... 続きをみる

  • 悪魔の掌中その30

    「明日にでも病院について行ってあげるわ。だから安心して今夜は寝なさいね。」冴子の暖かい眼差しを受け、感謝の眼差しで返す清志だった。 「だけど病院側が入院して検査すると言ってきたら、あなたから正直に両親に話してね。大丈夫、両親はあなたを叱りはしないから。」「その薬も、病院で調べてもらいましょうよ。私... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その29

    ただ・・・、ここでこんな話をするのもなんですが・・線路に飛び込んだ途端、気を失ってはいたんですが暗闇の中で不思議な感覚を受けました。 それは、今でも憶えているんですけど・・・。なんか温かな真綿に全身がくるまれた様な、赤ちゃんになって母さんの胸に抱かれているような、 もっと遡って母さんの胎内で羊水に... 続きをみる

  • 悪魔の掌中その28

    僕は悩み続けました。秀也に押し付けられた薬を誰かに飲ませるという罪の意識も勿論あるのですが、そもそも自分の性格からして交渉事を成し遂げること自体に無理があったのです。僕は自分で言うのもなんですが、内向的で会話するのも得意じゃないし、増してやハッタリや嘘なんて顔色変えずに言えるわけがない。だけども、... 続きをみる

  • 悪魔の掌中その27

    「お前が飲んだ開発薬とは種類が違う薬を、知り合いに勧めてくれりゃあいいだけなんだ。簡単な事だろ?」そういって僕の反応をじっと視る。 「そんな顔するなよ。」体を少し傾けて制服のポケットからプラスチックの手のひらに隠れる程のタブレット・ケースを取り出した。蓋を開けると水色の錠剤が10錠ばかり入っている... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その26

    次の日、秀也は午後から登校してきました。体調は戻ったのか気にはなっていたのですが、彼の正体を知ってしまった今、嫌悪感が先に立ち、目を合わせる事さえダメって感じで・・・知らん顔してたんですが、後ろから肩を叩かれ「よぉ、無視かい?」と意味ありげに笑ってきたので「何とも無いようでよかったね。」と、ひと言... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その25

    「すみません。今の話もう少し詳しく話してもらえませんか?」ハヤテは消え入るような弱々しい声で清志に言った。『まるで鬼だ!』清志のその言葉に相当ショックを受けた。(僕の父は鬼なのか?さっき観た夢に出てきた父は優しさに溢れていた。温かい人柄を肌で感じられた。夢は夢でしかなかったのか?それとも、あの夢に... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その24

    秀也には驕りがある。お金持ちの親と、誰もがひれ伏す組織のボスが叔父なのだ。労せずして2つの力を手にしているとの思い込み。良い悪いは別にして、父も叔父も1から築き上げたからその存在感に重みがある。産まれたときから周りにちやほやされて育ってきた彼には、なんのポリシーも信念も持ち合わせていない。あるのは... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その23

    斑目所長は息子の秀也をちらっと見てから、僕に話しかけた。「君は秀才だと秀也から聞いているが、人の脳の働きについてどの程度知っているかね?」そういって冷茶を一口飲み込んだ。「はあ。」と曖昧な返事をして所長を見返す僕の答えを待つ気はないのか独り言の様に話し出した。「この研究所の主な目的は、老人の脳の病... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その22

    研究所がどこにあるのか、遠いのか近いのか、何時帰れるのか。逃れられない今の自分の立場は、地獄に護送される囚われ人の様だ。後部座席から見るフロントガラスから観える景色は、いつの間にか街並みは消えて、田畑ばかりで何の刺激もない一本道をひた走っている。30分も走っただろうか、目の前に突然、森が現れた。い... 続きをみる

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  • イブ#その15

    『ウ~wwww』公園裏にあるゴム成形工場の昼休みを告げるサイレンが鳴った。10分程して二人の工員が、手に弁当と水筒を持って公園内に入り石のベンチに並んで腰掛けた。 石田と高井は、晴れてる日には決まってこの場所で飯を食う。油か原料のゴムで汚れたのか作業服の胸から腹にかけて黒い染みとなっている。いくら... 続きをみる

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  • イブ#その14

    走り出して直ぐにスーツの襟の後部からヘッドカバーを抜き出して被った。両サイドの耳が当たる処に、右側がヘッドホンと同じ傍受機が付いていて左側は自分を中心に半径50キロまでの、様々な情報が入ってくるようになっている。言葉の洪水にもコンピューターが素早く選別しランク付けをする。聖徳太子は同時に10人の話... 続きをみる

  • イブ#その13

    20分後公園の石のベンチで、博士は仰向けになり夏雲を見ていた。途中でイブの背中を力一杯叩き、ようやくスピードを落とさせたが寿命が10年縮まった思いであった。(暴走・・?ふっ、エヴァじゃあるまいし・・・)と、苦笑しながら体を起こす。隣ではイブが背筋を伸ばしフリルの付いた涼しげな白の夏物ドレスと、それ... 続きをみる

  • イブ#その12

    次の日博士は6時前に起き、身支度と朝食を手早く済ませた。昨夜寝る前に計画を立て、それを実行するためだ。外に出て長い間使っていなかった自転車を軒下から出して、タイヤの空気圧を調べた。少し空いているようなので、空気入れでチューブに空気を送り込み「よーし」と満足げに一つ頷いた。家に戻りイブに仕度をするよ... 続きをみる

  • イブ#その11

    あの機能が働いているのは、朝食を摂っていた時に確認済みだった。そして今のジャンプでの実験は正常を裏付けしていた。パワーのオン・オフの使い分けを状況判断で切り替える機能のことだ。「じゃあイブ、この屋根の上に飛び上がってくれないか?」「ワカリマシタ」今までと表情が変わった。目つきが微妙に変化し肌の色が... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その21

    いつ動き出したのか気付かなかった。何時の間にか滑るように高級車は走り出していた。「久しぶりだな、佐竹。」身を乗り出して秀也が運転手に声を掛けた。「お久しぶりです、秀也ぼっちゃま。」ルームミラーから微笑みかけてる。「その言い方はやめろと言ってあるだろ!」やれやれと云う様にまた革シートにふんぞり返った... 続きをみる

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  • 悪魔の掌中その20

    扉を開け、中に入った途端どっぷりと冷気の海に突っ込んだ。斑目は迷う事なく左側の窓際テーブルに進んで行って、深々とソファーに座った。僕は初めて入った店なので、周りを見渡しながら恐る恐る座った。「アイスコーヒーでいいね?」メニュも見ず、僕の嗜好も訊かず氷水を持ってきたウエイトレスにオーダーした。冷たい... 続きをみる

  • 悪魔の掌中その19

    幾度もシュミレーションを繰り返し、ようやく纏まったのが昼過ぎだった。(フード付きのトレーナを着て、2時過ぎには家を出なきゃ、この体調では間に合わない。定期券を忘れない様にして駅まで普通5分だが、10分みなきゃ。で、各駅が、毎時30分に確か出ている筈だから、それに乗る。名古駅に着いたら降りて、出札口... 続きをみる