takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その36

「単刀直入に訊きますが・・・テレビに映っている謎の女性、あなたじゃないですか?」弟妹が出て行った後も、しばらく無言でどう切り出そうか迷っていた均だが、意を決して言った。
ひとつ間違えば人権蹂躙で訴えられかねない発言だが、彼には確信があった。
じっとイブの目を見詰める。(これは目なのか?目に似せた、ただのレンズなのか?)いままでの澄みきった瞳が色あせる。人としてみる目と物として見る目で、こうも違ってくるのか。人とは、なんと残酷な生き物か。均にそう訊かれ、イブは見返しながら暫く無言でいた。そして(ふっ)と笑って言った「そうです、これは私に間違いはありません」あまりにも素直に認めてきたからか、均は次の質問を失念した。しばらくお互いに無言で見詰め合っていたが慎重に言葉を選び均が訊く。「あなたは人間ですか?」言ってしまった。どうみても人間にしかみえないものに失礼な発言を敢えてする。動悸が激しくなり呼吸困難になった。「違います。私は一部を除き全て人工物で構成されています」認めた。少しだけ呼吸が楽になった。「その一部とはなにですか」ふと一部という言葉が気になって訊いた。「あなたもご存知なものです」(俺の知っているもの?)思いつかなかった。「思いつかないので・・・それはなんですか?」「私の体の核となる部分。人に例えるなら心臓にあたる・・。そこに遠い宇宙の彼方より落下した、いえ正確に云うなら飛来した隕石を指しています」「隕石ですかー」隕石と聞いてそう時間をかけずピクニックの出来事を思い出した。強烈な記憶がいつまでも残っている。「あの時の!・・・」「そうです、シールドが剥がれこの星で見た初めての生物があなただったんです」「私はこの地球でいう石とは違います。これでも生命体なんです。生存の危機に遭遇してこの地球に逃れてきたのです」にわかに信じられない内容の発言がイブの口から事も無げに飛び出し、常識慣れした均の脳はパニックを起こしかける。喉がカラカラに渇き、恐怖も湧いてきた。ただのロボットじゃない!宇宙生命体がなかにいる。あのルビー色の石が。