takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

葛籠・その3

麗美が宿題を終えて、二階から降りてきた。もう夜の8時だ。居間にあるテレビのリモコンを取ってテレビに向け電源をオンにする。チャンネルを次々切り替えていたが、気に入った番組がないのかオフにしてポイっとテーブルに投げ捨てる。「あ~あ、つまんないー」両手を頭の後ろに組み、口を尖がらす。ふと、母親の冴子が妙な箱を前にして座っているのが目に入った。「なに?何これ?」「つづらよ。おじいさんは大きなつづらと小さなつづらのうち小さなつづらを選びました。すると、煌くような大判小判がたくさ~ん入ってましたとさ!のつづら。」「へww!開けないの?」「これは、まるちゃんの物よ。まるちゃんが風呂からあがったら開けるつもりよ。」「そっか~、いいな~まるちゃん。宝物入ってるよ、きっと。」なまいき言ってても麗美はまだ小学生ってことだと冴子はニヤケて見ている。そこに、ランニングシャツとトランクス姿でハヤテが現れた。ハヤテを見上げた麗美がポカンと口を半開きにして見て言った。「あれ?ハヤテ君、髪切った?」小学生に君付けされたハヤテは、照れながら「うん。」と、言って頷いた。いきなり立ち上がった麗美はハヤテに駆け寄り、「へww、かわいいー」と、頭を撫でまわす。「うわwwやめろよ~!」と、後退するハヤテを尚も追いかけ、「きゃはは~、かわいいー」と、撫でに行く。そんなふたりを、優しい目で冴子が微笑んでみている。「まるちゃん。あなたのおじいちゃんから、プレゼントが届いているわ。」と、声を掛けると、「えっ?」と、驚いた顔をして冴子の傍に来た。「この箱。開けてみる?」ごくりと唾をのみ込み「あ、はい。お願いします。」と言う。鋏で紐を切り、ふたを開けた。その中には奇妙な物が入っていて、3人とも首を傾げた。ハヤテがそれをそっと持ち上げた。「羽根?かな~」「そうみたいね。」1メートル程の2肢の翼が、背負子にくっ付いている。「あwwこれって、天使の羽じゃないの?ハヤテ君小学校に行っていないからさ~、おじいちゃんがランドセルをイメージしてこしらえたんだ、きっと~!」ぎゃははは~と、麗美が涙を浮かべて大笑いしている。「ちょっと~、麗美ちゃん失礼でしょ?そんなわけないわよ。でもリアルに作ってあるわね~。一本一本がとても大きい。こんな羽根を持ってる鳥、地球上に存在しているのかしら?」そう言って触ってみる。「これ、作ったものだわ。人工物よ。すご~い、よくできてるわね~」と冴子は、舌を巻いた。「まるちゃん、背負ってみたら?」「はい、そうします。」そういって背負ってみた。「なんか、学芸会にこんなのあったww!」と、麗美がまた大笑いする。だが、背負っていたハヤテが興奮している。「あっ!あっ!なんかー!なんか奇妙な感じがする・・・。パワーが、漲ってくる様な・・・。」はっと気付き、テレビの横に置いてある天狗の面を持ってきて、おもむろに被った。被った途端に、胸が苦しくなった。頭痛がし、吐き気もしてきたが、それに耐えている。「まるちゃん、大丈夫?」冴子が、心配して声を掛けた。