takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

葛籠・その2

その夜、ハヤテは新聞紙が敷き詰められた真ん中に、ちょこんと座らされていた。特大の青いビニール袋の底に穴が開けてあり、頭からスッポリ被せられて穴から頭部だけが抜け出さている。冴子が、シャキシャキと鋏を鳴らしながら、ハヤテの髪形をどうしようかと模索中。(まずは、この長い尻尾をバッサリやるか~?ケッケッケッ)随分と楽しそうだ。むんずと毛の束を掴むと、躊躇一つしないでジョキジョキ断髪していく。ハヤテは、ちょっと不安げに意識を後頭部に集中する。
「よっしゃー!一丁上がりww!」切り取った尻尾を頭上高く掲げて、勝ち鬨の雄叫びをあげ、ハヤテは恨めし気に、それを見ている。あとはと云うと、ハヤテの頭を中心に、冴子が忙しくぐるぐる
回っては切り刻んでいった。その度にバサバサと髪の毛が新聞紙に大量に落ちていく。ハヤテはまな板の鯉状態で、目を閉じてしまった。そうこうしているうちに「はい、できたよ~ん!」手鏡を渡された。恐る恐る覗き込むと、なんと鏡に映っているのは・・・前髪パッツン、オカッパ刈りの我が姿。(なにこれww!とほほほ)「なかなかいいじゃない!かわいいよ~ン」冴子はご満悦だ。「さっ!お風呂で洗髪しておいでー!」袋を脱がし追い立てる。「はい。」暗いトーンで返事をして、トボトボとハヤテが風呂場に向かった。冴子は落ちた髪の毛を新聞紙で包み、別のビニール袋に押し込んだ。(さてと・・・、あっそうだ!)押入れの襖を開けて、長さ1メートル程の竹で編んだつづら箱を抱かえ出してきた。(祐馬叔父さんが最後に送ってきた工芸品なんだけど、添付してあった手紙には、まるちゃんに渡すように書いてあったから、今まで開封しなかったけれど・・・)冴子は、麻紐できつく縛ってあるその箱を、風呂からハヤテが出てくるのを待ってから開けるつもりでいる。