takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

清志と秀也・その1

清志はいつも通り7時過ぎに起床した。前夜に飲んだ松本病院の錠剤が本当に効くのか不安で、なかなか寝付けなかったが起き上がってみると、何の違和感もない。(効いている・・・。間違いない)これも皆、冴子さんやハヤテ君たちのお陰だと、心から感謝した。「清志~!起きてる~?」母の呼ぶ声がする。「は~い!」自分の声がやけに明るいと、返事をした後、そう思った。
、(僕は生きてる。そして、これからも・・・)当たり前のことが凄く重要なことだと、今だから噛み締めることができる。手をギュッと握りしめると腹に力が入った。そして足の太腿を伝わって、つま先まで漲ってゆく。(華奢で、消極的で、ひ弱な僕だけど・・・。もう、負けない!負けない!言いなりになるもんかww!)自己暗示とも決意ともとれる気合を自身に入れて、部屋を出る。
リストラされて無精ひげを生やした父に「おはよう、お父さん!」と、大きな声で元気よく挨拶をした。俯き加減で眼も淀んでいる父が箸を止め、思わず驚いたように清志を観た。そして、「お~清志、おはよう~。元気だな~」と、最近では見せたことがない笑顔をつくった。
清志は話せる範囲で冴子たちを話題にして、食卓を華やかせた。その話に父が笑い、母が笑った。こんなに楽しく朝食を摂ったのは何時以来だろう?たった一言僕が声を掛けただけでこんなにも雰囲気が変わった。いままで気づかなかったけど、こんな簡単なことなら僕にだってできるんじゃないか?と、和やかな雰囲気の中で清志は思った。


「行ってきま~す!」と清志が玄関を出た後、父と母はまだテーブルを前に、向かい合ってお茶を飲んでいた。
「清志、今日はなんか生き生きしていたな~」「そうね~、あんな清志見るの久しぶりだわ。」
「・・・俺も負けてられないな。まだまだ、これからだもんな俺たち。もっと前向きにならないとな!よし!今日は、絶対職を決めてくるぞ!」夫の眼はもう淀んではいなかった。妻は、あのエネルギッシュに働いていた頃の眼が戻ってきたと、泣き笑いの表情で夫をみた。