takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その42

買い物から帰り、ふたりはキッチンに入る。一応古臭い流し台が設備してあるし、電子レンジやオーブントースター、ガスレンジもある。イブはそれらの一つ一つを観察するようにみた。人工頭脳が解析を始めている。「イブさんはお料理したことあるの?」買い物袋からテーブルに食材を移しながら歩美が偉そうな事を言う。買い物も行ったことがないんだから、当然料理なんてしてるわけないと断定して訊いているようだ。「料理?したことないです」イブが苦笑して言う。(ふふっ、やっぱり。勝ったね~)歩美は変なところでライバル心を出している。「私が教えてあげるから、一緒にやろうよ」たかだかカレーライス作るくらいで先輩風吹かし胸を張る。イブはぺこりと頭を下げ「よろしくおねがいします」と言って笑った。実は人工頭脳に例えば『カレーライスを作る』を入力し食材と調味料を視れば一流のシェフが登場しイブの目となり手となって調理することは可能なのだが、まだ均以外に自分の正体を明らかにするのには早すぎる。不要な場合、能力は使わない方が良いに決まっている。しかし生活を同じくしていれば、いずれ分ってしまうだろう。その日は案外早く来るのではないかとイブは思った。