takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その41

歩いて10分程でスーパーに着く。着くまでに歩美は思いつくままイブに質問してきた。
ホームレスしていた以前は何処にいたとか、歳は幾つだとか、親は何処にいるとか・・・。
殆ど答えられない。苦笑を返すばかりだ。歩美も最後は音をあげて黙ってしまった。
スーパーは年季の入ったと云うべきか、ガラスには隙間がないほど値引き品の短冊が貼り付けてあり中でも大人の背丈ほどあるポスターには『本日大売出し』とある。が、一目で貼りっ放しと判る。雑貨屋を大きくした感じで、食品から薬、衣類、花、虫取り網まで所狭しと並んでいる。夕方には少し早いのか、お客さんは疎らだった。赤い店の籠を取って野菜コーナーからみて廻る。「その籠は?」イブが訊くと「え?面白い質問するのね。買い物したことないの?」と歩美が笑う。「ありません。」正直に答えると、「えっ?ほんと~?イブさんてハタチ過ぎてるよね~?ひょっとしたら、大金持ちのお嬢さん?」と、立ち止まってまじまじとイブの顔を覗き込む。
「うちもね~少し前まではお父さんが経営者だったから、お金あったんだけど・・・」そう言い掛けて口を噤んだ。「あっそうだ!今夜はカレーライスと、サラダでいい?いつもは鶏肉だけど、今日は特別に牛肉でー!」嬉しそうに歩美が言うので、どういう料理か解からないが、イブもつられて笑った。買い物客とは馴染みなのか、オバサン達が声を掛けてくる。それにハキハキと歩美は応えている。「ねっ、ねっ!イブさんの事、みんな観てるよ。イブさん美人で目立つからね~。兄貴の彼女と思ってるんじゃない?」いたずらっぽい目で笑う。「えっ!そうかな?」口に手をやりイブは辺りを見回しくすっと笑った。「予算2500円なんだよね。色々買い過ぎたかな~?」籠の中を不安げに見る。「大丈夫。今2362円よ」即座にイブが言う。「?なにそれ?あてずっぽ?それにしては細かい数字言うのね」歩美は、半ば驚き半ば冗談として受け取って声を上げて笑った。レジに持って行き、清算してもらうと、ぴったり2362円だったので、ぽかんと口を開けたまま目を見開いてイブをみた。イブがドヤ顔で歩美を観て笑った。