takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その45

イブはレベル2にセットしてジャンプした。普通なら砂浜か波打ち際に落ちて、その周辺にいる人々を巻き込む二次災害の恐怖が、見上げている者の脳裏をかすめたのも頷ける。その頃、弘と歩美はビーチ・ボールに夢中で気付かなかったが、均は何か胸騒ぎがして監視台の方を見たところだった。(あちゃww!何、やらかしてんだよー!)全身から冷や汗が出た。目は、なだらかな放物線を描き、波打ち際から遥か遠方に落下したイブを追っていた。かなり離れた位置からでも『ボッシューン』っと云う海に突っ込む音が聞こえた。見ていた人達は、超越した飛距離に「なんだ?あれー」とか「うっそー!」とか思わず口にし、それがザワザワザワと云う騒音となって均に届いた。しかし、1分以上経っただろうに一向に浮かんでくる気配がない。騒ついていた人々は、今度は水を打ったように静まり返った。(浮かんでこない!やばいな~)(早く、顔を出せ!やばすぎるだろー!)(もう、だめだろー、誰か助けに行けよww)手に汗を握りつつ、飛び込んだ付近に目を凝らしている。やがてひとりが走り出し入水すると、それにつられて泳ぎに自信のある連中が次々と続いて海に入って行った。その情景は、事情の知らない者が観れば、感動的にさえ映るだろう。しかし、ようやく彼等が落下点と思しき所に途り付き、潜り探し廻っているがそこには影も形もなかった。イブのコンピュータは、海上を泳ぐより潜水を指示していた。両腕を真っ直ぐ伸ばして手を結び、高速で腰を振る奇妙なスタイルだがその推進力は驚異的で、54ノット(時速100キロ)に達している。頭脳は水中最速魚のバショウカジキを選び出し、イブにオーバーラップ(憑依?)させたのだ。