takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その35

依然、均が俯いたまま黙っているので微妙に白けた間ができてしまい、各自無言でテレビを眺めている。『・・・・いまだに足取りはつかめていません』画面では投稿者による動画の再生を次々と映し出し、5人の解説者があーだこーだと講釈を垂れている。対象となる者の映像はどれも鮮明でなく、特に近距離撮影に至っては高速移動が原因なのかブレが酷く、その上ぼやけている。「世の中には、普通じゃ考えられん事が時々起こるもんやな~。おもしろ!」弘がひとりごちている。「ね~。何度観ても、すごいね~」歩美も観ながら頷いている。イブも黙ってその画面を観、コメンテーターの意見を聴いている。均はテレビを観ながらチラチラとイブの表情を伺っている。『わずか30分間程に起きた大パニックでした。突然現れ猛スピードで走り去り、その後掻き消えた様に存在が不明となったわけですが・・・、軍事機密に詳しい伊藤さん、どう思われますか?」問われた伊藤氏は小首を傾けた後咳払いを一つして「そうですね~、私の考えとしては宇宙人説は論外だと思います。地球外生物ならもっと異形な筈です。外見をよく観て下さい。地球の女性そのものじゃないですか」「宇宙人じゃない。・・・それでは、なんだとお考えなんでしょうか?」「このジャンプ観て下さい」2車線を行き来する自動車の遥か上を飛び越えている映像が映し出される。「これは何度も映し出されている映像なんですが・・・。走り幅跳びの金メダリスト.の女性の記録が7m40距離的にはそれより少し上回っている程度、走り高跳びでいうなら男性で2m39cm、女性で2m06cmですのでこれも少し上回っているのですが、この複合での跳躍となると地球人の骨格及び筋肉では、いくら鍛え上げようと限界なんです。しかも、これ正面飛びですからね~。つまり限界を超えた能力を携えたモノ。人工的に造られたモノに間違いはありません。ただ、今の開発者の中にこれ程の完璧なモノが造れる人物が私には見当すらつかない。それこそ宇宙人が造ったとしか思えないですね」「つまり・・超高性能人型ロボットか、それに類するものと言って間違いないと・・」「そうです」伊藤氏が納得顔で頷く。「ロボットかww」弘が場の空気を変えようと、わざと大きな声を出す。「この女性って、イブさんだったりしてね」歩美がイブを見てクスッと笑う。イブがニヤッと笑う。「う、うん!」均が咳払いを一つし「おい、お前たち夏休みの宿題まだ残っているんだろ?そろそろ片付けないと追い込まれるぞ」2人を睨む。「はーい」痛いところを突かれたのか、2人とも素直に腰を上げて退参する。「イブさん、改まって訊きたい事があるんだけど」均は真剣な表情で体を真っ直ぐイブに向け正座をした。