takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その34

「あっ、そうそう。イブさんのショルダーバッグも汚れていたから、よく絞った濡れ布巾で拭いたけどよかった?」歩美がイブに言う。「・・・・あ、はい。・・・どこに置いてくれましたか?」「洗濯機の横の台の上に。持って来ようか?」「すみません、お願いします」オッケーと言って身軽な動作で歩美が部屋を出て行く。その間3人は押し黙ってテレビを観ている。特にイブは画面を食い入るように観ている。「持ってきたよん。はい、これ」歩美がバッグを差し出す」「ありがとうございます」イブは礼を言って受け取り、ファスナーを開けて中を覗き込んでいる。それを歩美は見ていて、あとの2人は見て見ぬふり。イブが中に手を突っ込み、紙の様な物を出した。千円札。「均さん、ありがとうございました」均に向かってそれを差し出す。「あわわわ!」ひとの顔色って、こうも瞬時に変わるものかと驚く程に真っ赤になって、目を泳がしながら千円札を奪い取り手の中に隠した。なにしろ一瞬の出来事。弟妹はぽか~んと口を半開きし、今の出来事を頭の中で整理し出した。「兄ちゃん?」2人の声が重複する。「これ、どういうこと?」すぐに歩美が突っ込む。「あ、いや・・・」しどろもどろ。「やっぱり知り合いだったのね。なにも隠すことないじゃん、ね~?」弘に同意を求める。「そうだよ、わけ分んないよな~」「あっ、いや・・・知り合いってわけじゃ・・。これには深い・・・いや、深くないか(苦笑)ただ、お金を持っていないって言うんで貸しただけだ、うん」「兄ちゃんは、見ず知らずの人にお金を貸すんだ。随分お金持ちだこと!」歩美が強烈な嫌味を言う。均は小さくなって俯く。「まっ、まま。いいじゃない。・・・歩美、言い過ぎ!」弘がそう言った後、意味ありげににやにやしながら均とイブを交互に観る。(そんなんじゃ、ないってば!)それを口にすれば、今までのことを一から十まで説明しなくてはならなくなる。面倒くさい。ご勝手にと口を噤んで黙秘と決め込んだ。イブはニコニコ顔で「均さんにとても親切にしてもらって・・・。こんな嬉しかったこと今までにありませんでした」そういって均を見つめる。ヒューヒュー。思わず弟妹からこんな冷やかしの口笛が飛んできそうでヒヤリとしながら、(おいww!どういうつもりだww!かんべんしてくれよww)均は半泣きの表情でイブをみた。