takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

清志と秀也・その4

弁当をたいらげ「ふ~」と一息吐いて前を見ると、いつの間にか秀也が席をたっていた。
それに気がつかなかった自分に、彼に対して神経過敏でないことは良い兆候だと安堵した。
いつも清志は、弁当の後は机にうつ伏して昼寝をするか、次の授業の予習をする。昨日休んだ分を取り戻すため、教科書を開いた。すると、ポケットに入っている携帯が、ブルブルと震え出した。
マナーモードにしてある携帯を取り出し発信者をみると、秀也だった。嫌な感じがして、受信ボタンを押すと「もしもし、俺だ。飯は食ったのか?」と訊いてきた。「ああ、食べたよ。」「じゃあ今から屋上まで出て来いよ。」「えっ?屋上?」清志は窓の外を観ながら、怪訝そうな顔で訊く。「ああ。屋上の給水塔の下で待ってるから、すぐに来い。わかったな?」言い訳や拒否は許さないという、強い口調だった。清志は(来たか。)と思った。逃げていても始まらない。ゆっくりと立ち上がった。
校舎は3階建てだ。清志は、階段を上って3階に行き、その上の屋上への階段を上った。鉄扉を開けると、風が少し吹き込んだ。屋上に踏み出すと、疎らに学生たちがたむろしていた。昼休みに、屋上に来て、時間つぶしをしている連中も少なからずいるのだ。給水塔に向かって歩き出すと、人影が見えた。その付近には彼のほかには誰もいなかった。