takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その31

と、その時目の前で女性の声がした。「ありがとうございます、もう大丈夫です」
今まで棒状になっていた体は、しなやかさを取り戻し密着している均に息づかいや心臓の鼓動まで伝わってきた。イブは両足を曲げ正座して弟妹を見ている。均はあわてて腕を解き、イブの前方にまわり込んだ。イブは視線を均に移し、「迷惑をかけて申し訳ありませんでした。急に目眩がして倒れてしまいました。貧血を起こしたのでしょうか。」(貧血?ばかな!)均は思わず声に出しそうになったが辛うじてとどまった。「泥だらけだけど、どうしたの?」歩美が訊く。イブは初めて気がついた様に「あら、ほんとだ。どうしよう、これでは外を歩けないわ」と、オロオロしだした。(なんか演技の匂いがぷんぷんするなー)均は勘繰って顎に手を添える。「元気になられて良かったですね。どなたか存じませんが、気をつけてお帰り下さいね」立ちあがり出て行ってくれるよう暗に促した。「兄ちゃん!なんて冷たいこと言うのよ。可哀そうじゃない。泥だらけなのに~」歩美が睨んだ。「そうだよ、せめて服を洗って、シャワー浴びてもらったら?服が乾くまで何かを羽織ってもらえばいいことだし。なんか、兄ちゃんらしくないよ。そのまま出て行けなんて~」弘も加勢する。均は(うっ・・)と声が詰まった。(こいつら何も知らないからなあ)一つため息をつき「急ぎの用がなければ、そうしませんか?」(急ぐわけないよな~、俺の後つけて来たんだから・・・)「え?ほんとうですか?助かります」イブはそういっていきなり服を脱ごうとした。「あああww!」3人は驚いてそれを止め、「お風呂、こっちだよ~」と家の中に入るよう促した。「あっ、そうですか?そこに行けばいいのですね」そう言って土足で上がろうとした。「あああwwww!」また3人で押し留める。均は、先が思いやられると額に手を持っていき天を仰いだ。