takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ベストパートナー・その7

刀に疑惑が及ばず一先ずホッとしてお互い微笑んだところで、開場となった。ガードマンの指示に従い、順次入って行く。割り込む者も無く皆礼儀を わきまえている。ガードマンは橘と顔見知りらしく、顔を見るなり敬礼をした。 橘のグループと言う事でノーチェックで入れた。指定の座席はいわゆるカブリツキ (正面、最前列)の席で、二人・・いやメンバー全員感激の声をあげた。 少し小太りのお兄さんの隣に美鞘が座りメンバーの一番端で美鞘の隣に 昭雄が座った。開演まで大分時間がある。昭雄はふと一番肝心な事を橘から訊いていないと思った。前屈みにして横を見ると6席隔てて座っている。 足元に置いたダンボールの箱から、メガホンを取り出し準備中だ。キリクノ隊のライブでは、メガホンの応援は公認らしい。 「お兄さん、お兄さん。ちょっと伺ってもいいですか?」少し前屈みになり 美鞘の隣の小太りに声を掛けた。小太りは美人が隣なのでノリノリで、反応は 素早かった。「何、何?分からない事があったら、何でも俺に聞いてくれて いいよ」血色の良い顔が、興奮で生き生きテラテラしている。「前のコンサートで橘さんが由真さん 助けたから、お礼に招待されたと聞いたんですがーどういういきさつだったん ですか?」美鞘も「あっ!」と言いウンウンと首を縦に振る。「ああ~、あの事件 なー」小太りは回想する様な目になった。「あれは・・・救ったと言うべきなのか 俺の頭の中ではクエッション・マークが点いてんだが~・・・。コンサートが終わって彼女たちが 専属のバスに乗り込むまで控え室から少し距離があるんや。フアン達は、声を掛 けたいし あわよくば握手なんかできれば最高じゃん。プレゼント手渡したい 者もいるしな。俺達もそんな感じで待ってたんやけど、警備員と共に出てきた 彼女等がフアンの波に押されて身動き取れず特に由真ちゃんだけ一人離れてし まう形となった。そこに良からぬ考えを持つ輩が刃物を持って近付こうとした。 橘はそれにいち早く気が付き、手にしてたメガホンを思いっ切り 男目掛けて 投げつけたんや!ボコーンンン!と凄い音がして倒れたんは由真ちゃんやった。でもこれが幸いした。男は突然目標がなくなりそのまま壁まで突っ込ん で行ったんや。そこでグキッと手首を捻挫して唸っててさ~。そんな男を橘さ んが蹴って蹴って・・俺ら達が止めなきゃどうなっていたか~。だからさ 橘さんが助けたというのはちょっと違うような・・なっ? 」そう言って小太りは 橘の方をチラッと見た。その時黒いジャンパーの男が橘の席に近寄ってきて ニコニコと何か言っている。背中に『ライトオン・プロダクション』のロゴが見える。 マネージャーらしい。橘は立ち上がって恐縮し、手まねでメンバーにお礼を 言うように指示を送りながら、ペコペコ何度も頭を下げている。それにつられる ように、昭雄達も立ち上がってお礼を言って頭を下げた。そうこうしているうちに 照明が落とされ、幕の脇に司会者が現れて巧みな話術により観客を盛り上げる。
いよいよ『キリくノ隊』のコンサートの幕開けとなるのだ。


今時メガホン?サイリュームじゃないの^^;司会者ってなに?いいんですよ!kazuワールドなんだから(*^_^*;)