takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

月光の剣・その7

乾はみるみる血色がよくなり、顔もシワのないピンク色に変わったが・・・残念ながらピカリと光る頭だけは変わらなかった。「おお~!この爽快感!随分長い間忘れてた。まるで、心に澄み切った青空が広がっている様だ。この気分をこの年になって感じることができるなんて・・・。う、うっう・・ありがとう!わかった。君の希望、何としても叶えよう。」乾は感激のあまり涙を流してそう言った。所長は立ち上がり「薬が役に立てて何よりです。では、私は他に用があるので、これで・・・。」「そうか。じゃあ後程こちらから連絡をする。」乾のしゃがれ声は、いつしか張りのあるバリトンに変わっていた。乾はデスクの電話を取り秘書を呼んだ。先ほどの美人秘書がノックし、静かに扉を開けた。
品のあるお辞儀をし、それを合図に所長は部屋を出た。出て、ふと思った。(あの美人秘書、若返った乾の・・・。まあいいか、充分に堪能すればいい)所長は、いつになく下品な笑顔で、歩き出した.。案の定、乾は秘書の両手を窓のサッシに掴まらせ犬の様に後ろから攻めていた。窓から見えるビルの入口にオモチャの様に小さく見える救急車が止まるのを、あえぎ声をあげながら秘書が見ていた。←《またまたwwこの部分必要なの~?@@;》
未無来が出口に向かって歩いていくと、玄関口に,救急車が止まり救護隊員らが担架を担いでバタバタ急ぎ足で入ってくるのとすれ違った。未無来は、何事もないような様子で隊員たちを見送って外に出た。
外はすっかり夕暮れの色が濃くなり、早々と帰宅しようとする人々で駅に向かう交差点は賑わっている。信号待ちの間、正面のビルの超大型モニターがニュースを映していて、何気に彼はそれを観ていたがハッとした顔つきに変わった。彼に興味をいだかせる何かが映し出されている様だ。
そばまで行くと、彼同様に大勢の人々が画面を見つめ騒然としている。画面は美鞘のデモンストレーション、剣の舞を映していた。未無来は思わず呟いていた。(あれはグリーン・ビッチ星のkhkbwqpではないか!何故あの武器がこの星に・・・)画面の下に字幕が入ってキリキリくノ一隊のコンサートの模様を解説している。(ほう、キリキリくノ一、かー。しかしあの娘は私の記憶に残っている。あの時は棒ッ切れを振り回していたが・・・。いずれにせよ、もう一度お目に掛かる必要がありそうだな)そう言ってニヤリと笑って歩き出し、やがて怪物は人混みの中に埋もれていった。