takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その18

「ところでさ、美鞘ちゃん。剣術の練習はどうしてんの?」と橘が訊いた。「え~と、ですね。今の学校には女子剣道部がないんですよ。だから放課後一旦家に帰り、日が沈むまで人気のない場所まで行って、やってます」淡々と答える。「あ~そうか~。でもひとりだけで練習していても上手くならないんじゃないの?相手がいなけりゃね~。形も大事だけど、やはり相手の動きや攻撃を身をもって体得しなけりゃ、いざ実戦の時まずいことになるんじゃないか~?」
「ええ・・・。前の学校で、ある程度の対戦は経験してますが・・・確かにレベルは低くかったですね。いくらこの剣が力も入れずに凪ぐだけで切れると云っても、相手は怪物ですから、どんな手を使って来るかも知れませんしね。そう言われてみれば、不安もあります」美鞘は深刻な顔をして橘を見る。
橘は「そこで提案があるんだがな~。実は俺が週に数回、昭雄に空手を教えているのは知ってるよな~。そこの道場は警察関係者が訓練する所で一般の者は入れないんだが。どうだろう?美鞘ちゃんさえよければ、俺がなんとか上に口を利いてやろうか?そこには婦人警官たちが練習しているし、なんなら猛者に手合わせしてもらえるかも知れない」橘は美鞘の反応を伺う様に見る。それを聞いた実鞘の目がきらきらと輝きだし、満面笑顔となって橘を見たものだからシャイな橘は思わず顔を赤らめてしまった。「ほ、本当ですか?!橘さん!とても嬉しい。是非ともお願いします。キャー!橘さん、ありがとう~!」両手をお祈りするように結んでじっと見つめるポーズをした。こういう仕草をすると、美鞘もただの女子高生なんだと昭雄が横からにやにや見て、橘は益々照れてしまい美鞘をまともに見れなくなった。