takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その19

それから数日間がなにごともなく去り、美鞘はいつものように昼休みの図書室に行くと昭雄が既に居た。「よっ!早いね」と手を上げて同じテーブルの椅子に座る。「実は昨日橘さんから連絡があったんだ。携帯で電話かメールを送ろうと思ったけど、急ぎでもないし会って話そうかと思ってね」図書室にはいつも通り、殆ど利用者はいない。多くても5,6人だ。いつものメンバーがいつものテーブルで本を読んでいる。だから、一番隅っこの孤立しているテーブルなら、小声で話す程度は構わないだろうと思っているのだが、はたしてどう思われているか?そういえば、こちら向きにいつも座って厚い本を読んでいる、前髪パッツンの黒縁メガネの子。彼女のことを美鞘が噂したことがあった。「あの子、昭雄君のことチラチラ見てるよ。気があるんじゃない?」そう言ってウフフと笑った。「えっ?」昭雄が言われて彼女の方を見ると、また見ていたのか慌てて俯いた。(あっホントだ・・・。今も見てた。僕なんかに興味あるのかな~?)そう思いながらも悪い気はしない。いや、むしろ凄く嬉しい気持ちになった。それが顔に出ていたのか「あれ?昭雄君、鼻の下伸びて締りのない顔になってるわよ。やっぱ、昭雄君も男の子だったんだね」と、美鞘に冷やかされたことがあった。その子は今日も来ていてこちら向きに座っている。あれから昭雄は彼女のことが気になって意識するようになってしまった。何となくだが彼女を見てしまう。美鞘が彼女を見て「気になる?」といたずらっぽい目をして訊く。「あっ、いや・・・ううん!」とひとつ咳払いをして「今度の土曜日の昼過ぎ、1時間くらいなら会えると高畑さんが言ってきたんだって。それで、僕たちの都合さえよければ行かないかと言ってきた。どう?都合いい?」美鞘は、スマホを取り出し暫く操作していたが、「大丈夫よ、行けるわ」と言った。「東京かww。ついでにスカイツリーに連れってもらえないかな~」「お~!そうだね~。行きたいよね~!」とふたりで盛り上がった。その流れで周りに目を移すと、じっと、パッツンがこちらを見ていた。昭雄は(あ!)っと思い首を縮めて姿勢を正した。