takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その20

黒のレディス・スーツをスタイリッシュに極めたモデル並みの女性が高畑と供に歩いてきた。ライトオン・プロダクションのビルにあるロビーだ。
橘と昭雄は所属しているタレントや歌手の大型パネルに魅入られて全く気がつかない。
美鞘だけは、すぐに気付き、彼等が目の前に来るまでじっと目を離さず、その女性の一挙一動を観察するようにみていた。
美鞘は妙な感覚で彼女を捉えていた。全く気配というものを感じられない。高畑の隣で歩調を合わせているのは、人型ロボットじゃないかと思えた。
(まさかね?私がどうかしているんだわ。先入観にとらわれ過ぎてる)
「やあ、よく来てくれたね。昭雄君に美鞘ちゃん。この前はありがとう。助かったよ。ちゃんとしたお礼もできず申し訳なかった」
その言葉に驚いて体制を変えた橘と昭雄、それにすでに向かい合っている美鞘を見ながら、高畑は律儀に腰を折って深く頭を下げた。