takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ベストパートナー・その3

美鞘はワザと(やれやれ・・・)という顔付きをして立ち上がった。
昭雄はニコニコ笑って目を輝かせている。ガッツも嬉しそうに尻尾を振っている。 「じゃあ、やるかー!」」美鞘は気合の入った声を上げた。何が始まるのか 浮き浮き顔で昭雄が観ている。美鞘は「シュッ」と剣を鞘に収めた。すると柄と鞘との境目が溶け合わさるように無くなった。だが昭雄はそのことに全く気が付かない。「いくよ~!」っと一声掛けて鞘の中心に手を添えた。そしてバトン・トワラーの様にシュンシュンと剣を回転させた。バトン・トワラーというよりブルース・リーのヌンチャクと言った方が近い感じだ。淀みなく流れる旋風!縦横左右。美鞘の体の周りを緑色した回転体が飛び回る。ブルース・リーの悪役の様に、呆気にとられた昭雄は剣の回って行く方向に釘付けであった。しかもそれをやっているのが美鞘であることが一層興奮の度合いを深めた。 何たる身体能力の高さ。常人を越達している。(美鞘さんって何者なんだ~?)そう思った時、剣は空高く舞い上がり、降りた(まさしく降りた)先は美鞘の人差し指だった。鞘の真ん中を人差し指が支えている。昭雄は不思議そうに指の先を視ている。刀が乗っているのは、指というより爪先なのだ・・・(随分軽い刀だなあ~) 「フウッー」っと息を吐き、美鞘はそれを握って腰の辺りに。「うわ~凄い、凄いよ~!凄過ぎるよ~!」感激の涙を流さんばかりにいや、流して昭雄は拍手した。(こんな僕の為に~!嬉しい!何たる幸せ者だ僕は~!・・・)しばらくジーンと余韻に浸っていた。すると美鞘が言った。
「マジックを観せると言ったでしょう?これからよ~!」そう言って昭雄に剣を放り投げようとしたが(怪我するかな?)っと思い直してそっと草の上に置いた。「さあ、この剣持ってみて。」昭雄は(?何?なぜに?)その意図が分からない・・が、言うとおりにしようと近付いた。人の意識と体は対になってて爪先で支えられる程軽い剣のイメージがあるから、片手でヒョイッと持とうとした。
ところがピクリとも動かない程、重いものだから一本背負いの様に一回転して尻餅をついた。(なっ?なっ?なに~?)「あれ?あれれ?」訳が分からない。常識の箍が外れた瞬間だった。常識で推し量れないものを目の当たりにし、昭雄は恐ろしい物でも観る様に刀から一旦飛び退いたが、恐る恐る跪きつつ観察しだした。「この刀・・・・地球で作られたものではないんだね。」っと昭雄が柄になく鋭い事を言ったので、美鞘は驚いて彼を視た。冗談で言っていないのが何時になく真剣な表情で分かる。「この刀が磁場を発生させて地中と引き合うのか?それとも、引力か重力を操作する仕組みを刀に埋めつけてあるのか・・いずれにしても、こんな超高等技術、地球人では無理だからね。」
(なんか言ってる・・えらそうなことを・・・でも半ば当たっているかも知れない・・・)「美鞘さんの生体エネルギー(オーラ)によってロックが外れるのかも。生物は全て、外郭にオーラを纏っている。指紋と同じで同一のものは二つと無いからね。この刀、美鞘さんしか使えないようになってるんじゃないの?だから美鞘さん以外の者が触ると、持てない様にロックするんだ、きっと。」じっと昭雄を見ながら、美鞘は彼になら話しても言いかな、と思った。いや潜在的に話したかったに違いない。 だから、色々やって見せたのだ。「当たりよ。よく解ったわね?」 そう言って、いままでの出来事を彼に話した。彼は常識的には考えられない事を笑いもせず 真剣に聞いてくれた。「あれ?そんなバカな事って笑わないのね?」 「今現実を見せ付けられてるし、第一みさ・・北見さんがそんな冗談言う筈ないもん。」「北見さんが選ばれた人で良かった・・・。君は最高の救世主だよ!」