takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その6

「用件?・・・ですか~」イブは橘から視線を逸らし行き交う車の群れを漠然と眺めながら言った。
「私・・・私はキリキリくノ一隊の大ファンで、。いつしか彼女たちの様になりたいと憧れるようになったんです。それで、キリくノ隊のメンバーの方たちに話を聴いてみたいと・・・」嘘が下手だなと橘は思った。「キリクノに憧れて、芸能人になりたいと思ってここへ来たと言うんですか?」「あ、はい」まあ、この容姿なら充分芸能人としてやってはいけるだろうが・・・。だったら他に方法は幾らでもある。「キリクノに会うのが目的ではなく、芸能関係の仕事がしたくてライトオン・プロダクションを訪れたってことでしょう?あなた最初に言いましたよね?『キリクノに会う為』って。どちらが本当の目的なんですか?」
イブは、なぜこの警官は私の行動目的にこだわりを持つのか?そんなこと個人の自由ではないか。イブは少し不愉快になってきた。それは、イブがより人間に近づいた証でもある。イブが文句を言おうと口を開き掛けたとき、先に警官が「わかりました」と、言ってきた。「もう、これくらいにしてきましょう。ところで差し出がましいこと訊くんですが、アポは取っているのですか?」イブは正直に「いえ」と答えた。警官はしたり顔で頷き「私の知り合いがこのプロダクションにいます。会えるかどうか訊いてあげますよ」ポケットからスッと携帯電話を出し登録してある高畑あてに発信した。
「あ~、お忙しいところすいません。先程はどうも。もう、会議終わりました?あっ、そうですか。今からそちらに伺ってよろしいか?社長は?みえるんですね。御社に慶兆を齎す悦材が見つかったんですよ。すぐに連れて行きますから」よし!と言って携帯を閉じ「じゃあ、早速売り込みに行こうか?!」警官の目がきらきらしている。イブは不気味に思ってみている。人工頭脳のコンピュータは、警戒レベルのイエローランプが点滅している。しかし、ここで引くわけにもいかないし、考えようによってはチャンスだともいえる。のる事にした。一方橘はイブに疑念を深めたが、これ以上職質では無理と判断した。しかし拘束はできない。このまま帰してしまっては手の届かない所に行ってしまう。いっそライトオンに入れてしまえば、監視し易くなると閃いたのである。それが吉と出るか凶と出るかは判らないのだが。双方の思惑が交差する。