takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その4

橘は何気なく喫茶店の窓から店の前を行き来する人やその向こうの車道、そして建ち並ぶビル群を観ていた。
車道では途切れることなくかなりのスピードで車両が走っている。
(さすが東京だわ。自分らの住んでいる田舎と大違いや~)と、へんなところで感心している。ふと、道路を隔てた向こう側に、スタイルの良い若い女性が立ち止っているのが目に入った。(さすが東京だわ。自分らの住んでいる田舎では、あんなベッピンさん滅多に見掛けんからな~)ヒューと思わず、小さく口笛を吹いた。スタイルの良い女性は道路を渡りこちら側に来たいようで、辺りをキョロキョロ見渡している。
(おいおい、確かに信号機は相当離れた所にあるけど、まさか車の途切れるのを待って車道を横切るつもりやないやろな~)
その女性から目が離せなくなった。(やめろよ、バカなことはやめるんだ!そんなことをしたら自殺行為だぞww)
橘が、冷や冷やドキドキして見ていると、女性がビルの方に後ずさって行ったのでホッと胸を撫で下ろした。
ところが、その女性はぐっと腰を低くし助走の構えをとったので、(えwwばかな!何する気だ~!)と思わず立ち上がり窓にへばり付いた。
女性は見惚れる程の理想的なフォームで幅5メートルの側道を走り、車道との境い目で踏み切り力強くジャンプした。
橘は(あwwだめだ。車にぶつかりに行く気かww)思わず目を閉じた。急ブレーキ音。追突する車同士の衝撃音。血塗れで横たわる女性。
間違いなく数秒先に起こる出来事が、頭の中に浮かんだ。・・・が、目を開けてみると何事もなく車は行き来していて、その流れも滞っていない。
だが、ただひとつ今までと違う様子が店の前で起こっていた。ひとりの女性がこちら側の歩道に立っていて、その周りにいる人々は彼女から大きく円を描くように避けている。なかには腰を抜かしたようにその場にしゃがみ込んでいる者、怯えている者、逃げていく者、様々だ。そして、その中心で困ったような顔をしている人物こそ、橘が注目していた女性だったのだ。(例の宇宙人、見つけた!こんな所にいたのか)橘は、急いで席を立ちレジに向かった。