takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その3

勤務明けに橘は早速高畑マネージャーに電話して、会って話したいことがある旨を伝えた。高畑の携帯電話の番号は特別待遇の橘の携帯に登録されている。「では早速今日の昼過ぎの・・・、そうですね、1時丁度にうちの事務所前にある『喫茶サンシャイン』でどうでしょう?」との問いかけに「その時間で結構です。お忙しいのに申し訳ありません。」と電話を切った。早速身支度を整え、PCでJRの時刻表を出す。長野駅から東京まで1時間半程かかる。駅まで30分とみて、今から急げばどうにか間に合う。こちらがお願いするのだから、向うの都合に合わせるのは致し方ない。約束の時間の45分前に喫茶店に着いた橘は、大盛りチャーハンを注文して、空腹を満たした。そして喫茶店での習慣となっている『コーヒーを飲みながらコミックを読む』を、こんなときでも実践している。暫くすると『カラン~』とドアの鐘が鳴り、そちらに目を向けると高畑が入ってきた。高畑は、「ここまで出てくるのも結構大変でしょう?」と、笑顔で言って席に着く。高畑とはかなり親しい間柄となったので、お互いリラックスモードで話ができる。高畑は確か、橘より2歳年上だった筈だ。諸々の世間話を少しした後、橘は本題に入っていった。昭雄の学校でドリンク,ギガの評判が非常に良くて新聞部員(嘘)の昭雄と美鞘が皆の後押しで、取材を実施したいのだが、いきなりでは断れかねないのでキリクノの企画があれば便乗したい。それを、懇意にしている自分に依頼されたのだがどうだろう?と相談したのだ。自分が考えたシナリオながら、なかなか良いできだと思った。それを聴き、暫く考えていた高畑が「今のキリクノはコマーシャルも相まって、爆発的に売れています。寝る暇がないほどなんですよ。でも、面白いアイデアですね。テレビ局も巻き込めば未無來さんも出費なしで宣伝出来る訳だし、こちらも恩返しができる。ふむふむ。いや~面白いです。よし!何処かに割り込みができるか前向きに検討しますよ。」嬉しそうに高畑が言った。「いや~、面倒なことをお願いして申し訳ないです。」橘が頭を下げた。「いやいや。こちらこそいいアイデアを持って来てくれたと、感謝したいぐらいですよ。」
高畑は、話に夢中になり冷めかけたコーヒーをブラックで飲み干して腕時計を見た。「じゃ、近いうちにこちらから電話しますから。これから会議に出席しなければならないので。」そう言って握手をして、早足に店を出て行った。クラシックのゆったりした音楽を聴きながら(警察官が嘘をついちゃいかんよな・・・)と、橘は窓から人の行き来している店の外をぼんやりと見ていた。


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