takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その8

橘を残し、高畑とイブは応接室の奥にある部屋に入った。そこに社長はいた。12畳ほどの洋間の壁際は全面本棚となっており、夥しい数の本がぎっしりと並べられていた。ここは、主に社長の書斎として使っている。大きなテーブルの向うに髪の薄い口髭を生やした、でっぷりとした体格の50代と思われる男性がノーネクタイのワイシャツ姿で調べ物をしていた。「社長、お仕事中失礼致します。こちら、橘さんの紹介で入社希望のイブさんです」社長はひょこっと顔を上げ、立ち上がって「や~どうも~!話は聞いていますよ~、社長の桂です。なるほど~、お綺麗な方だ~」テーブルを廻って、握手を求めてきた。反射的に無意識で手を掴んだが「あいててww!」と社長が叫び、(あっ、まずい!)と、手を離した。社長は、余程痛かったのか目に涙を浮かべている。「す、すみません。私イブといいます」社長は手に息をフーフーとかけながら、「あなた、凄い握力してますね~」と、まじ顔でいうので、高畑は(イブさんは軽く握っただけなのに・・・。こんな時何の意味もなくギャグれるなんて、さすが社長~)高畑は思わず社長の横に立って「そんなことあるかいな~!」と手の裏側でビシ!と軽く胸を叩く突っ込みを入れたくなった。