takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

選ばれし救世主・その7

継正は毎夜異星での夢を見る。江戸時代宇宙に対してどこまでの知識があったかは分からないが、幸いにも継正は物事に柔軟な考え方が出来るのか、
受け入れるのは早かったようだ。だから異星人を認めたし、彼からの話の内容も信用した。異星人から止められたことがひとつ。書き物として残さない事。第三者の者が開封して大騒動を引き起こし、将来への不安を不要に煽りかねないとの理由から。鷹飛家の直系に、口頭で引き継ぐことを言い渡されている。だから、初代から末裔までの言い伝えは多少の枝葉が付いたり、また抜け落ちたりもしている筈。だが、本筋だけはしっかり伝わっているはずだと継子は言う。本筋とは枕元に立った異星人の言葉。夢の話は、かなり信憑性があるが枝葉が付いた可能性もある。しかしこの夢によって怪物の習性や、15年間身を隠し美鞘が今をもって戦わなければならない理由が明らかになっていったと母は言う。



夢はいつも宇宙船の中だった。それは継正に、怪物の変化や行動を観察させる為に映された、異星人による高等技術だろうと3日の夢を観た後、そう思った。なぜならいつもの様にドアの影から覗いている傍にいつの間にか異星人が立っていたからだ。ヒトに良く似た姿かたち、髪はなく目はヒトの倍ほど大きく真っ黒で、鼻は隆起なく鼻腔のみ。緑色の蛙の格好ではないが、なぜか同一人物だと夢では認識している。継正が考えるに〈我が星に来るための装具〉を脱いだ素の姿と見受けられる。夢の始まりは何時も脱皮からで、日を追って姿、形が変わるのが手に取るように分かる。船の中に前日の夢にはなかった道具や生き物がいきなり存在したり、掻き消えたりする。傍の異星人が時折日本語で説明をしてくれる。(一日の夢はお前の星の一年とみよ。)短い言葉だが意味はのみ込めた。一年毎の変化を見せているのだ。その夢は2週間続いた。その頃には怪物の姿は原型を全く留めておらず、どこから浚って来たのか10体の生物と同じ姿形に変身を遂げていた。そして次の日の夢で、10体の現地生物を引き連れて宇宙船から出て行った。出て行った後、継正は異星人と始めて怪物が過ごしていた部屋に足を踏み入れた。継正は、目の前で目まぐるしく活動している機械群の光のシャワーを浴びながら、呆然としていたが、異星人が横に立ち説明しだしたので、ひと言も聴き漏らすまいと集中した。彼の説明は外来語や聞き覚えのない言葉ばかりだが、夢の中では不思議と理解できたのだ。
「彼は常に宇宙を巡って生物反応がある星を見つけると、そこを破壊し全滅させていく『グレート・デストロイ』と名付けられ、恐れられた存在なのだ。なぜ破壊し続けるのか?憶測だがヒトで言うなら陳腐な言い方でいうと生き甲斐とか欲求とか、神から与えられた役割だとか。彼はひとつのゲームとして楽しんでいる。辿り着いた星を廃墟にした時点でゲーム・オーバー。損得で動いているのなら、そこに僅かな隙も生じ対策も立てられるが、ターゲットに選んだ星の破滅だけが目的では、彼を倒す以外解決はしない。彼は高度な知性を持ちながら残忍で陰湿で狡猾だ。お前が眠っている間、今もそうだが、このデモ画面がいつも彼が執る手法なのだ。現星人に知られず到着し船を隠し、そこであらゆるデータを収集する。決して自分の正体を現さない。脱皮を繰り返し現星人に成り済ます。その間お前の星の期間でいえば15年。寿命のない彼にとって15年なんてほんの一刻だからな。その間に、全ての準備を調える。自分の指示で思い通り動かせるよう、現星人をさらい船で洗脳した後戻して、自分が成り済まして自然と環境に溶け込めるよう万全を期すのだ。しかし初期に慎重だった彼も慣れによる油断が少しづつだがみえてきた。例えば、絶対船でしか脱皮をしなかったのが、気が向くとわざと外でしたりと。だからこの慢心や驕りに隙が出来てきたのだ。私たちは、彼の弱点を研究しひとつの武器を開発した。それが『mhbvcxz』聞き取れないだろう?私の星の言葉だ。そうだな、お前の星の言葉で言うなら・・色が変わるツルギ・・・お前の星の上にいつも照らされている月も様々な色をみせる。『月光の剣』で良いだろう。」そういって異星人は顔をグシャッと変化させ『グヒョグヒョ』と変な声を発した。どうやら笑い声らしいと夢の中の継正は思った。