takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

選ばれし救世主・その8

今更すみませんm(_ _)m。下書きのままでした。残念ながら継正は選ばれし者ではない。月光の様に変化する抜身を一度でも観てみたいと弟子たちを、また集合させて両端から綱引きの要領で引っ張ったがピクリともしなかった。第一にツバがないから柄と鞘との境目が分からない。どれ程丹念に視ても一本の杖としか思えなかった。継正は落胆したが、その一方で異星人の科学力を称賛した。怪物は三百年後とは言っていたが、余りにも遠い未来のこと。正確な年号は異星人にも解からないと云ったところか?が、要するに今を期に三百年が近くなれば、直系で1歳になった子孫に代々触らせていき、杖が何らかの反応を示せば、自動的に戦闘開始の火蓋を切るということだ。(これは、長い年月に耐える別所を造って厳重に保管せねばならんな)早速、大工と左官屋を呼びつけ、庭の離れに頑丈な祠を建てるよう命じた。そして祠の地下に杖を納めたのだ。杖は、刀掛け台を持ちさえすれば子供でも運べる。そのようにして300年の間、その杖(月光の剣)は深い眠りについていたのである。


鷹飛家の言い伝えは、代々密かにだが最も重要な催事として、迷うことなく引き継がれていった。言い伝えの三百年が目の前に迫ってくると、いよいよ切羽詰った感となり、親とすれば願わくは我が子が史上最悪の危機に、無敵とも云える怪物と対峙し立ち向かわなければならない大役に選ばれないよう、神に祈りつつ祠を訪れるのだった。幸いなことに三百年目が過ぎ、言い伝えの信憑性が疑われようとしていた時、両親の反対を押し切って駆け落ちした娘から子供ができたとの、知らせが入った。娘にも小さい頃からこの言い伝えは、幾度となく聞かせてあるし、彼女自身1歳の誕生日には儀式を受けているのだ。成り行きには事情があろうとも、娘は直系だからその子(美鞘)には祠に入ってもらわなければならない。美鞘が一歳になったお祝いの為と銘打ち、実家に呼び寄せたのだ。美鞘はとても愛くるしい顔立ちで継子の両親は頬ずりして、可愛がった。餅を背中に背負わせて転ばせる儀式 も無事終わり、正男もかなりいい気分で酔っ払った。そして正男が酔いに任せ眠ってしまったのを機に沈鬱な両親の後を美鞘を抱いた継子が付いていったのだ。そこは実家から少し離れた所にある、古いが頑強にできている祠にしては大きめの建物で倉と言っても過言でもない程であった。中に入ると父は目立たない所にある紐を引っ張った。すると足元の床がスライドして口を開いた。何故か備え付けのろうそくに火を付け(今時ろうそく?^_^;)そう思ったが口に出さなかった。地下に降りて行った。真正面の観音扉を開け、継子の方を見やった父は、形容しがたい面持ちだった。それは継子にも伝わった。願わくはこの子でありませんように・・そういう気持ちに違いないのだ。ろうそくの灯りに映し出されたその杖状の物は、何の変哲もない薄ぼけた無用の長物に思えた。しかし美鞘が生まれた時から感じてた形容しがたい妙な予感。それを否定し続けて今日まで過ごしてきたのだが・・。(誰かの作り話に決まってるわ。大丈夫よ、美鞘)そう念じると、さっさと終わらせようと無造作に美鞘を刀に近付けた。が、継子の祈りを断ち切るように、美鞘の小さな手が杖に触れた瞬間に異変は起きた。
鞘が突如虹色に輝きだした。色が目まぐるしく左右に移動する。ブビュウーンビュウーン・・と電子音が鞘から発せられ、それは十秒程続いた。
次第に光は収まって行き 全体が緑色に薄く発光する事で落ち着いた。その間、あまりの出来事に大人達は口を半開きにして、唖然と立ち尽くすだけだった。しかし驚きはこれだけでは納まらなかった。力自慢の継正さえ重いと口にし、屈強な弟子たちに持上げさせたその杖を、何と片手で持ち上げている。いや、くっ付いていると形容した方が正しいか?磁石に吸い付けられてるが如く。まるで杖に羽が生えている様に軽々と・・継子はその時あまりのショックで杖を我が子から振り落とすとその場から逃げるように抱きかかえて飛び出したのだ。
杖とか刀とか・・・いったいどっちねん! 作者は『座頭市』の仕込み杖の短いタイプとイメージしています。
正確には剣とか刀ではなく、異星人が創ったハンディータイプの科学兵器なんですけどね^^;