takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

選ばれし救世主・その5

「ちょ、ちょっと待って、お母さん!」美鞘(みさや)が、後部座席から身をのり出す様に母の話を止めさせた。
「あっ、ごめんなさい、話の途中なのに。ちょっとパニクっちゃって・・・」そう言いながら元の位置に座り直す。
「その話、私がその宇宙から来た怪物と戦わなきゃならないわけ?まさか、冗談でしょ?だっておかしいじゃない。
地球を乗っ取ろうとする怪物が、地球に到着した時に産まれた子なんでしょ?戦えるわけないじゃない。」
「私が思うに先祖の継正さんは寝ぼけちゃって、知らぬ間に枕元に置いてあった刀を、夢で見た緑の妖怪の授け物だと思い込んだだけなんじゃない?周りの者も天下の継正には進言もできず、事実として継承されていった・・・。そういう流れって結構あるんだよ世の中って。」知ったかぶりして、美鞘がコクコクと頷く。母がちらりと後ろを振り向いた顔をまた正面に戻すと、「そんなのなら親の私としたら、どれ程嬉しいことか・・・。産まれたばかりの赤ちゃんが戦える訳がない。その通りよね。私も親から言い伝えを聞いた時、そう思って疑問を投げかけたわ。そしたらこの話には補足があるというのよ。」
暗い口調で淡々と母は話している。皆、押し黙りながら聴き入っている。正男も全て話し終えるまで言葉を挟まない気でいるようだ。「その補足なんだけどね・・・。」恐ろしい話が母の口から次々と飛び出した。