takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その10

「いや、どうもお待たせしました」応接室のソファーに座っている橘とイブに声をかけ、高畑が対面のソファーに掛ける。
彼等が書斎をでて5分ほど、殆ど待っていると云うほど時間は経っていなかったのだが。
「社長と相談した結果、採用させて頂くこととなりました」そういってイブの反応を見る。
なるほど、殆ど表情に変化はない。尚も見続けていると、それを察したかのように儀礼的な礼を述べた。「ありがとうございます」
(社長の眼力は確かだ。多くのスターを発掘してきたのはあの眼力に寄るところがおおきい。その意識で、改めてこの子を視れば成る程と頷ける。社長は精巧なマネキン人形と表現したが全くその通りだ。・・・だが、なにゆえに入社を希望したのだろうか?そこがわからない)
いきなり突然の大声で思考が中断した。
「やー!ありがとうございます!私が紹介してやると大見得切ったわけでして・・・。不採用となったら、格好つかないなと気を悶んでいたんですよ~!よかったな~、ええと・・・イブちゃん?」橘はそういって辺り構わず大声で笑った。
「ですが・・・」と高畑は言葉を選ぶように慎重なもの言いでふたりに言う。「我が社としては現在タレントの育成は行っていません。今いるスター達に全力投球して行こうとの方針です。その為、サポートするスタッフが不足している状態なんです。だから、社長の考えではスタッフとしてなら、採用させて頂く。しばらくの間、裏方を経験していただいて機を見て表舞台にて活躍してもらうのはどうかと。タレントありきで譲れないと言うのであれば、我が社とは縁がなかったとして、他をあたって頂きたいと申してまして。いかがでしょうか?」じっとイブの目を見て言う。横から、橘が身動ぎしながら「ああっ、あ~そーなんですかー。んん?ん!どうする?えと・・・イブちん?」いきなりイブちんと呼ばれ怪訝な顔で橘を一瞥した後、高畑に向かい「それで結構です。よろしくお願いします」と頭を下げた。