takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブの決意・その1

家の外は薄暗い午前4時。いつもの様に、強のアルバイトである新聞配達に送り出した後、身支度をして玄関口へ。均も歩美もまだ就寝中だ。
ここに来た時肩に掛けていたバッグには、博士が救助時にと用意した人工皮膚と同じ素材で出来ている黄色のコスチュームとブーツ、ヘッドホン式受信機が入っている。(結局のところ、博士がいなければ私の能力も生かせなかったということか)でも、と思う。強大な敵が現れこの星を滅ぼそうとしている。私はその敵と戦う為に造られたのかもしれない。これは天命ではなかったのか。(私もいつのまにか随分と地球人的な考えをするようになった)クスッとひとりで小さく笑い戸を開ける。外は朝霧が漂って静まりかえっている。(見送られる人もいないか・・。私らしい)と一歩歩み出そうとした時、不意に肩をつかまれ引き戻された。驚いて振り向くと、怒った表情の均が立っている。「イブ・・・。僕は君の事をロボットとか宇宙生物とか、ちっとも思ってないんだ。最近では普通の地球人より人間らしいとさえ思うようになった。だけどまだまだだな~。人間はこういうときに黙って出て行かないもんだ。僕はこれが最後だとは思ってないしまた会えると信じているけどさ。それでも当分の間は会えなくなるんだ。いつの間にかいなくなったら、次会うまで君のことが気懸かりとなって安息の日々を送れなくなる。人とはそういう生き物なんだよ。好きな人と会えなくなるなら尚更な。」そういって均はイブを引き寄せ、抱きしめた。イブに均の体温が伝わってきた。そのとき、イブのなかの何かが溢れ出しとても抑えることができなくなった。人工頭脳も解析不能でレッド・ゾーンに突入した。イブの身体が震え出し、レベル3にスウィッチを入れた時の様に肌がピンク色に染まった。そして人工物の目から、次から次へと水が溢れ出しコンピュータは故障の警告音を発している。イブの中の赤い石は、この現象に驚きながらも人間は何て素晴らしい機能を持った生物なんだろうと、心底思った。