takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ベストパートナー・その5

昭雄は美鞘の目をじっと見つめて聞き入った。そして美鞘が飲み物を口に運んで一息着いたのを見て、微笑んでこう言った。「美鞘さん。僕で良けりゃあ喜んで協 力させてもらうよ,
どんな些細なことでも遠慮なく言ってくれていいよ。」「おそら く途轍もなく強い相手だと思うけど、その剣の力さえ発動することが出来るなら、 倒す事は可能な筈だと僕も思うよ。」「うん。」美鞘が微笑んでいる。「早く二人で敵 を見つけなくちゃあね。事が起こるのは今日、明日かも知れないからさぁ。 敵は、密かに影で動きつつ有るかも知れない。 不可解な事件があれば、それを虱潰しに調べて関連がないか検討しようよ。」「それには・・そうだな情報を集めなきゃ。・・・うん、僕にそれは任せてよ。 実はうちは母子家庭で国の援助は少しあるんだけど、それでも生活厳しいし。 だから朝の4時過ぎに起きて新聞配達してるんだよ。その関係で日々の事件の記 事はいち早く目にする事ができるからさぁ」昭雄は目を輝かせ一気にそう言った。 「そうよね!戦国時代の格言に『敵を知り 己を知れば 百戦危うからず』って有 るけど、その通りだよね。情報は早く多い方がいいよね。」目を輝かせ、勢い込んで美鞘はそう言ったが、思い直したように真剣な口調で「でも、危険な事だけは 避けてね。私はそれだけが心配なの。」不安げな表情で美鞘が言い、柱時計を見る。 時間がかなり経ってた。「あ、私もう帰らなきゃあ。洗濯物取り込まないとー」そう言って 昭雄の家を後にした。美鞘が帰った後、昭雄は身動き一つせず、余りにも強烈な 今日の出来事を反芻していた。不可解な出来事・・・不可解?・・そういえば つい最近、有り得ない事件がこの辺りであった気が・・・そうだ!あの事件。
山中で女子高生の干からびた死体・・・結構大きな話題になったっけ。その後 ピタッと報道されなくなった。(警察が封じたか?)もう一回調べてみる必要ありそうだな・・っと昭雄は思った。
早速翌日図書館に行った昭雄は、過去の新聞で死体発見の関連記事を調べた。 そして・・(あった!)地元の新聞だ。(『愛宕町派出所の橘巡査が赤いスカーフ を・・・』愛宕町・・隣の町だ。あそこの派出所にも新聞を配っている。 橘巡査・・あっ!ひょっとして(キリキリくノ一隊)カツギトの兄さん?・・・最近早朝から派出所前で立ってて「君、朝早くからえらいね~、頑張ってるね~ 」と声を掛けられ、それから世間話をするようになった。芸能関係の話題が好きで 、好きなミュージシャンを訊かれた時「そうですね~今はキリくノ隊が一番いいです ね。」っと答えたら目をきらきら輝かせ(うう・・なんかこわい~)両肩を手で ギュと摑まれ「キミ~!ナイ~ス!すばらしー。キリくノ隊いいよね~、 俺フアンクラブ第一号なんだぜ~!」なんてテンション異常に上がってたのが 印象的だったな・・・。)なにか良い案でも浮かんだのか昭雄がニヤリっと笑った。 それからは橘巡査が派出所前に立っている時は必ず立ち話をするよう努めた。話題は美少女音楽ユニット『キリキリくノ一隊』。5人の美少女が色とりどりの 煌びやかな忍び衣装を身にまとい、殺陣を取り入れたダンスや軽業でフアンを 魅了する。なかでもリーダーでリードボーカルの「由真」の人気は絶大である。
橘巡査に挨拶する時は「おはようございます。」より「昨日テレビにキリくノ隊出て ましたね。」と言う方がご機嫌になる。話をして分かった事は、彼は非番に なると、芸能情報をチェックしてコンサートに行ける日、主催地等で参戦可能なら チケットを取るらしい。彼は日下市支部のリーダーなのでメンバー7名と行動を 共にする。以前異常なフアンが、興奮状態でサバイバルナイフで由真に切りかかろ うとするところを身を挺して防いだ事から、メンバーやマネージャーから感謝され 特別待遇されているらしい。そんなある日思わぬチャンスがやってきた。何時もは こちらから挨拶するのだが、今日は向こうから声を掛けてきた。「佐藤クン、おはよ~!」(こりゃ、何かあるな?)昭雄は思った。「おはようございます。」「もっと近くに来い、来い!」手招きする。「な、何すか?」触れ合うまでに近付くと 人目を避けるように橘巡査が胸ポケットから紙束を取り出した。「キリくノ隊の チケットだよう!」どうだと言わんばかりに小声で叫ぶ。「あwww、いいです ね~!ちょっと見せて下さいよ~。ウワ~いいなあ~。」「あれ?日下市文化 会館・・・8月12日って明日じゃないですか~?」「明日この町に来るんですね? 」なんか昭雄までテンション上がってきた。 「まあまあ、青少年よ、落ち着 いて~あはは~。今から自分が言う話をよく聞きなさい。」「実はこのチケットは この前のお礼にとの、特別招待チケットなんだよ~!」「うわ~すごい~!」っと 昭雄。「メンバーが8人だから8枚贈ってくれたんだが・・・。2人都合が悪くなっ た。・・・そこで、ふと君の事思い出してな!どうや?一緒に行くか~?」 昭雄の反応を楽しむ様に橘は昭雄に訊いた。「行く行く~!いや・・・ご一緒 させて下さい~!わ~い、やった~!」この反応に橘は御満悦 な様子。「もう1枚あるから友達いるなら・・・」「いるいるー友達~。誘っても いいですか~!?」勢いに圧された感じで昭雄にチケット2枚を手渡した。