車中での母の話の内容に皆は驚きを隠せなかった。が、その一語一句を聞き漏らすまいと皆は押し黙っている。その内容とは・・・ 今から三百年程前の深夜の事。継正の眠っている枕元に何者かが立っていた。継正は剣豪である。その彼にして気衝く事のできない侵入者であった。 (ツグマサ・・・)耳から入ってくる声ではな... 続きをみる
2022年3月のブログ記事
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美鞘の住む埼玉と母の実家である群馬県とは隣県ではあるけれど車で行くには1時間以上かかる。 母の継子は美鞘と代わり助手席に座った。そして正男にアドバイスを受けながら、通販で買った小さなカーナビに行き先をセットした。父の正男は、継子の実家には2度だけしか行った事がなかった。1度目は結婚を認めてもらうこ... 続きをみる
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車を脇に寄せハザードランプを点けながら憔悴しきった父がいる。蹴られたところが痛むのか、顔を顰めて体のあちらこちらを摩っている。だが大した怪我でもないであろう、 向こうは暴力のプロなのだ。マル暴がうるさくなってる昨今、傷跡を残すようなへまはしない。彼らは精神的ダメージを与える為一芝居うったのだ。だか... 続きをみる
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未無来がチンピラ達と車に乗り研究所に向かう途中でのこと。 田舎の国道を軽乗用車が走っている。車内は陽気な笑い声であふれている。 「だからな、お父さん耐えきれなくなって部長にこういってやったんだよ 『ダレジャ?性もないダジャレ言ってんの。寒すぎてギャグクリ腰になっちまったよ』ってな。」一瞬、車内が静... 続きをみる
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未無来所長は、組の事務所に出入を許され、暫くは退屈しない日々を於くっていたが、何時までもそうしている訳にはいかないと思った。そして朝方研究所に戻る途中、若い下っ端がささいな事故を起こしてしまったのだ。後部座席で(やれやれ・・・)と事が収まるのを待っていたが思わぬ事態になったらしい。一人の少女に暴力... 続きをみる
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「ふあwwぁ」突然龍二が大あくびをしたので、張り詰めていた空気が一瞬にして消え去った。 「もういい、やめろ。しようもない。この事務所や俺達を汚い血で染めるつもりか?馬鹿ばっかりだな、全く」「お前、俊介って言うのか?お前だけだな、まともな考え方しているのは。あそこにいる調子もんの教育もしてやれよ」顎... 続きをみる
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事務所内が立山を取り囲んで騒然としている中、龍二だけはあくびを嚙み殺しながらソファーに座っている。それは殺気立った周囲の中で、異様に映った。まるで同じ場所に居ながら、彼だけ別世界に存在しているかのような・・・。誰もいないソファーに、座っている龍二を切り取ってきて張り付けた合成写真のような、完成した... 続きをみる
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勝ち誇ったように退室した加藤の残像でも見ているのか、乾は暫くの間、身動ぎもせず鬼の形相でソファーを睨みつけていた。「おのれ~出来ぞこ無いが~偉そうにー!あいつだけは絶対に許さんww!」思わず声に出してしまう程、激昂していた。 が、数十秒後 さすが東大出の超エリートは冷静さを取り戻していた。最近使う... 続きをみる
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厚労省のトップに居座ってるその男は、加藤と同期であった。 不器用な彼とは正反対に、あらゆる汚い手を使いまくって最高速で 今の地位に登りつめた男である。同期ゆえに、互いの胸の奥で 微妙に意識する存在であった。片や優越感と蔑みであり、片や誰よりも遠避けたい世界で最も嫌な男なのである。その彼から呼び出さ... 続きをみる
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帰宅途中の加藤は胸を張り、颯爽と歩いていた。自分は森羅万象全てから祝福されているとの心持ちであった。(無敵だ、あのエキスを飲んだ時から私は無敵になったのだ。あふれ出るエネルギーがそれを実証している。)自然に笑みがこぼれ、思わず高笑いしたい気分だ。 普通なら朝帰りなどしたら、疲れ切ってとても正常な行... 続きをみる
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この章は18歳未満お断りです^^;小説の流れ上、どうしても必要だと判断し、少しだけエロい筋書きとなっておりますので><;。よいこのみなさんや真面目な方々は、す~っと流し読みしていってくださいね^^; そのドリンクを飲んだ瞬間、言い様のない強烈な生臭さと『ドロリ』とした粘リ気のある液を喉元が本能的に... 続きをみる
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(あ~、ここだ、ここだ。)地図らしき物を手にし、ようやくたどり着いたと云わんばかりに『ふーっ!』とひとつタメ息をついて加藤は玄関前に立った。彼は厚生労働省の外回りで、申請登録を受けてここに訪れたのだった。ビルのテナントに金看板で「医療研究所 所長 未無来 統一」(みむら・・ふざけた苗字。偽名だなこ... 続きをみる
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「雅次兄さん・・・。あっ、危ないじゃないっすか!怪我すっから、そんなもん収めてください」立山から3,4メートル離れたところで、真っ青な顔色をして、震えながらドスを構えているのは、立山より2つ年上の雅次だった。荒っぽい連中の中にあって、普段はとても大人しく、性格的に似ている所がある立山とは、割と気が... 続きをみる
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「警察に電話しますわ。まだら組に誘拐されたと」立山はスッとポケットから携帯を取り出しボタンを押そうとした。「ちょっと待てや、こらww!」組長が乗り出して押そうとした方の腕を掴んだ。立山は組長を睨みつけながら「今すぐ清志を解放して下さい。連れて帰りますから」声に怒気を孕んで叫ぶように立山が言った。組... 続きをみる
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班目が立山の向かい側のソファーにドカリと座り、その隣に伏し目がちな龍二が静かにゆっくりと座った。ソファーの脇に立っている俊介に顎をしゃくって(引っ込んでろ)と合図を送る。俊介は一礼して退いた。班目はイラついている様子を隠そうともせず、テーブルに備え付けられているシガレット・ケースから、タバコを一本... 続きをみる
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本革のシートに立山は浅く座った。周りは異様な程、静まっている。顔見知りの面々がちょっかい掛けてくるかと思ったがそれもない。究極の居心地の悪さだ。俊介が、組長と龍二のいる部屋に入って10分程経っている。中で何を話しているのか、なかなか出てこない。立山は、イラついてくる気持ちを抑えながら待つ。ようやく... 続きをみる
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立山の妻、幸恵は立山と知り合う以前、班目の女だった。班目が組長になる前の話。 JAに勤めていた頃、仲間たちと飲み歩いた時に何気なく入った店で幸恵と出会い、見染めてしまってから、店に頻繁に通うようになった。幸恵も立山の事を憎からず思うようになり、やがてお互いに愛情を抱くようになったが、幸恵に近着こう... 続きをみる
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次の日の午前10時過ぎ、立山はまだら組が所有するビルの地下駐車場の中に車を停め、その中でシートを倒してタバコを吸っていた。煙が籠るので、両方のサイドウインドウを半分開け、外気を取り込んでいる。この駐車場に入る前に、「喫茶まったり」に組長と龍二がいないか車内から確認したが、いつもの席に人影がなかった... 続きをみる
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立山がいつになく深刻な顔で、何か考えている。沈黙に耐えられずに、冴子が「コーヒーでも入れるわ」と立ち上がる。立山は表情を変えずに「うん」と返事した。(明日はハヤテ君を迎えに行く日だ。ハヤテ君は修行の成果を出せたんだろうか?)台所の方から、コーヒー豆をミルで砕く音がする。 (気を使わなくていいのに。... 続きをみる
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山の日暮れは早い。午後4時半を過ぎると、もう辺りは薄暗くなってきて(今日はこれくらいにしておこう)と天狗の面を外し額の汗をぬぐった。 原っぱから家に向かう道すがら、ハヤテは疲れ切った足取りでトボトボと歩いてはいるが気持ちは充実していた。何度も崖の上からダイビングを繰り返しているうちに、段々と翼を動... 続きをみる
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ハヤテは翼を羽ばたかせた感覚を忘れないうちにと、腰かけていた岩から立ち上がった。「よし、やるかー!」と声に出して、気合を入れた。 先ほどのダイビングで、心身とも、取り分け精神的疲労は激しかっただろうが、そこは15歳という若さがものをいう。たった10分程で急速に回復できた。 多分、背中の羽根が動かせ... 続きをみる
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秀也は非常階段を降り、校舎の裏側を通って垣根の外に出た。ここは昼間でも薄暗く、舗装が施していないため雑草が足のくるぶし程伸びてはいるが、かなり広い側道である。ここを通る車や人はいない。なぜなら、道なりに進むと行き止まりとなっているからだ。通知表に影響する試験日には佐竹がこの場所で車の中から解答を秀... 続きをみる
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