takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ギガ製造工場・その4

夜の8時前、橘ら一行はライトオン・ミュージックのビルにある、応接室にいた。
マネージャーの高畑と事務員のイブが出迎えてくれ、橘達の為に気を利かせサンドイッチとコーヒーがテーブルに並べてあった。皆は、というより橘は、その好意に殊の外感謝し喜んだ。「たぶん橘さんのことだからと思ってね」と屈託なく笑い、イブを除く全員が、その言葉に納得顔で笑った。橘は「さすが一流のマネージャーさんは違う。イブちんも高畑さんのこういう所を見習わなきゃいかんよ?」と図に乗る。イブは相変わらずクールな表情で、「わかりました。インプットしておきます」と、とんちんかんな返答で皆を黙らせた。
「と、ところで高畑さん、未無来製薬との打ち合わせで、撮影禁止だとの返答だったらしいけどメリットが無くなったのに我々と同行してもらうのは、何とも申し訳ないですね」橘が話題を変える。「そうなんですよ~。社長もそのことで急に冷めちゃって」と苦笑する。
「でも、私自身『ミラクルドリンク・ギガ』の薬効には前から興味がありまして、一度この目で製造するところを見てみたいと思っていたんですよ。世間での、ドリンクとしての名声とは逆に未無来という製薬会社は、いまだに濃い霧が掛かっていて謎の多い会社です。キリクノがCMをさせてもらっている会社の内容を全く知らないって事はどうなんだろうと思いましてね。しっかりと勉強してこようと思います」高畑にも思うところがあるようだ。皆、真剣な表情で聞いている。
「今回は由真は出席できないけど、残りのメンバーと勉強の為にここにいるイブさんが、あなた達と同行します」そこで橘達の目がイブに向けられたのだが、全員とも、特に美鞘は異常な程熱のこもった眼差しで見つめるのであった。