takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ギガ製造工場・その6

その夜の橘ら3人は、なかなか寝付けなかった。自宅でなかったことも勿論あるが、明日は、いよいよ敵陣営に乗り込むのだ。平常心でいられるわけがない。
最悪の場合、対決するかもしれないし、そこで命を喪うかも知れないのだ。
10畳ほどの宿泊室、二部屋に男女が分かれて就寝した。
事務所や応接室に、適当に寄り集まり11時前まで駄弁っていたが(由真を除くキリクノのメンバーの話が興味深く、時の経つのも忘れる程だった)高畑の「そろそろ寝ないと、明日が辛いですよ」の一声で床に就いたのだった。
マネージャーの高畑やキリクノ等は、単純に工場見学を目的にしているだけだが橘等は違う。
いざ事が起こりそうになれば、彼らの安全を第一に確保しなければならない。
橘は、その役割を昭雄に命じてある。もちろん攻撃力で劣るからであり、そういう時の判断力に優れていると思っているからである。
未無来社長が冷血な宇宙人だと高畑らには言えない。言えば、見学は中止されるか頭の具合を疑われるだろう。どちらにしても、良い結果を生まないはずだ。
だが、イブの考えはわからない。未無来製薬のことは既に分かっているかも知れない。なにせ、人工頭脳搭載の人型ロボットなのだから、膨大な情報を収集することも解析することもわけないだろう。彼女が向こうでどういう行動を執るのかで、情勢は大きく変わってくるだろう。
橘は、テレビに映っていた彼女のスーパーレディぶりを今更ながら思い出していた。
もしイブが本気で加勢してくれるなら、ひょっとすると美鞘以上に打撃を与えられるのではないかと期待する自分がいる。その一方で、敵に回らないにしろ全く手出ししないで中立の立場をとる事も十分考えられると思った。そうなれば、敵陣での戦闘はおそらく不利になるだろう。
なぜなら、巻き添えしてはならない者たちが多すぎる。人質に取られたら、お手上げとなる。(やはり・・・)橘は、今回の工場見学は情報集めに徹し、全員が無事に帰途に着けることを第一無二の目的に定めようと、心の中で考えを新たにした。