takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ギガ製造工場・その12

総務の中村が湯呑に冷茶を入れた大きな盆を持って入って来た。
みんなで礼を言って飲みながら、社長の話を聞いている。
「うちの工場は現在『ギガ』のみ製造しています。24時間体制で稼働していますが、それでも間に合わない程好調な売れ行きなので、増設を予定してます。製造過程は全てオートメーション化されていて、従業員はオペレーターと検査員のみです。
私がこの会社を立ち上げた理由は、そこの壁に掲げてある社是にある様に『人類の明るい未来に尽くす』です。大げさかもしれませんが、世界中の人たちが『ギガ』を愛飲してくれることにより、健康的な生活を送ってもらえる。その結果、未来は明るくなるだろうと思ったからです」未無来社長は額縁を手で指しながら晴れやかな表情で言った。高畑は「人類とは!地球規模で考えていらっしゃるんですね。社長の器の底知れない大きさに感服しました」と、持ち上げた。
だが橘ら3人は、そんな社長やソファーに座っているキリクノたちを、カメラのシャッターを『パシャパシャ』鳴らして撮っていたり、レコーダーを差し出して録音している風に見せながらも、腹の中では(よくいうよ、破壊者が・・・。あの額縁を裏返すと、人類の滅亡に尽くすとでも書いてあるんじゃないか?)と思った。
「でね、今はギガだけで凌いでますが将来は色々と健康食品やサプリを作っていこうと思ってるんです。そこのところは学校新聞に、必ず載せてくれるようお願いします」そう言って美鞘の方を見た。(ギガが世界中に行き渡り、すべての人が愛飲すればこの男の目的は達成したも同然。口から出任せの経営方針なんて、さらさら書く気はないわ。というより新聞なんて出さないから)「はい、そこは文字を大きくして書いておきます」口もとだけで笑顔を作り美鞘は答えた。社長もまた美鞘に口元だけの笑顔で返し「それでは皆さん工場内を案内しますから、私に付いてきてくれますか?」未無来社長は、そう言って立ち上がった。