takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

父子の決闘・その5

「僕は父さんを買い被っていた。もうちょっとマシな人だと思ってました。」「まさか僕と戦うために友達を人質に取るなんて。最低だよ。」とハヤテは言った。
「僕は父さんとの戦いを避ける事は出来ないと思っている。だからこうやって修行しているのに。そんな汚い手を使うなんて許せない。」ハヤテは感情を抑えながら淡々としゃべり、立山は黙ってそれを聴いている。沈黙が流れ息苦しい空気が車内に漂う。立山は、口に咥えたままのタバコが吸わないうちに短くなり灰が落ちそうになってから、ようやく灰皿の中でグリグリともみ消して蓋をした。そして静かな口調で語り出した。「あのな、ハヤテ君。わしはちょっと違う見方をしてるんだよ。確かに龍二さんはハヤテ君との決闘を条件に清志を引き渡すと言った。だが龍二さんがその提案をしなかったら、清志はもっと酷い目に会ってた筈だ。わしは龍二さんは清志を助ける為に強引に取引を持ち掛けたと思ってるよ。」「いつだって龍二さんは不利な状況からわしを救い出してくれた。今回もわしがまだら組に単身乗り込んで五体満足では帰って来れないところを、機転を利かせて何事もなく組から出してくれたんだ。」「ハヤテ君が思っているほど、親父さんはどうしようもないダメ人間じゃないよ。」立山はそう言うと、ぎこちない笑顔でハヤテを見た。ハヤテは立山の話を吟味するように考え込んでいたが、やがてフッと息を吐いて「そうだったんですか。・・・ありがとうございます立山さん、僕はまだまだ表面だけでしか物事を判断できないみたいですね。父さんは立山さんという仲間というか友人がいて、本当に良かったと息子の僕からしてそう思います。今後どうなるかはわかりませんが、いつまでも良き友人でいてあげて下さい。お願いします。」「おいおい、勘違いしないでくれよ、わしはハヤテ君の仲間なんだぜ。」と立山は笑い、「何とか大事に至らず事が収まってくれるよう願うばかりだよ。」「そうですね、できれば。」ハヤテは曖昧に返事をしてそう云うわけにはいかないだろうと内心思った。
「ところでですね、立山さん。修行しているうちに能力について色々解ってきたことがあるんですよ、聞いてくれます?」ちょっと嬉し気にハヤテが言う。「おっ?何だ何だ?わしみたいな普通の者でも理解できることなのかい?」「う~ん、今までの付き合いである程度僕の能力は分かってもらってるから、大丈夫だと思います。イメージ湧かなきゃ聞き流してもらっても全然構わないんで。」そう言いながら、ハヤテ理論を語り出した。