takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

(序章)まっとん、こころ乱される、其の6

次の日は快晴だった。まっとんの家から公園まで歩いて15分程。公園のベンチには待ち合わせの時間より、30分ほど早く来た。

昨日の晩はよく寝られなかった。天狗の面が頭の中に現れて睡眠の邪魔をする。羽をはためかせて浮かび上がり、空の彼方に消える。

何度も何度も同じシーンが出て来ては脳を支配する。ふと、(あのルポライターと名乗るおじさんも何か変だった。今思うと、何で携帯使わなかった?天狗と待ち合わせなら連絡し合えた筈だから、携帯番号知っているだろうに。それとか棲み家とかさ。明日は、質問攻めしてやろうかな?)そう思ってすぐに、おじさんの姿が目に浮かび、「ヤバいかな?」と寝返りをうったあたりから、睡魔に襲われ目覚まし時計に起こされるまで意識を失くしていた。寝不足の目に太陽の光りは眩し過ぎ、目を細めながら辺りを見渡していると、「おう、待たせたかい?」とサングラスを掛けたヤ○ザが両手をズボンのポケットに突っ込みながら近付いてきた。

「いえ、僕もさっき来たばっかです」と、まっとんは立ち上がって答えた。

「喫茶店でも行くか?」と立山が言いながら道路側を見渡した。まっとんは「どんな喫茶店でも良いなら、ここから歩いて5、6分のところにありますよ」と言った。「ああ、そうか?じゃそこにするか」と、立山は顎をクイッとシャクってそこに案内するよう指図した。こういうところが、一般人と違うところだとまっとんは感じた。急いで立山の横に並び、手で行く方角を示し歩いて行く。歳の離れた二人に共通する世間話はあまりなく、かと言って暗すぎる訳でもない。淡々と周りの景色を見ながら目的の喫茶店に向かっている。


その喫茶店は見た目にも小ぢんまりした、あまりハヤってなさそうな店で駐車場には土曜日だというのに車が1台も停まっていない。

入口の縦看板に【モーニングサービス。8時~11時コーヒー+バタートースト+ゆで卵で400円】と書いてある。

二人はこの看板を見ながら中に入った。