takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その6

突如目の前を鋭く尖った光の矢が走った。間髪入れず『カリカリカリww』と空間を引き裂き『ドーンwww』と地響きが轟いた。(すぐそこまで来ている! )回想が吹き飛んで現実に引き戻された。急いでイブの許に戻り人間なら心臓にあたる部分にはめ込まれた透明なカプセルを凝視した。
中には大人のコブシ大もあるルビーに酷似した石が一つ、ライトの光を反射して収まっている。(私の研究が間違っていなければこの石(隕石)がイブに 永遠の命を授けるはず。失敗すれば二足三文の鉄屑に・・・)そう思う間も無くフラッシュが焚かれたかの様に窓外が明るくなり、『パリパリパリww』と背筋も凍る荒神の声を聴いた。刹那、地震の如く家が振るえ、瞬く間に火柱が石を食らった。一瞬、身動きがとれず立ち尽くしたが直ぐに我に帰り、ケーブルをカプセルから抜いてアースへと導く別のケーブルに装着した。(フゥ~)と一息洩らし額の汗を白衣の袖でぬぐいつつカプセルを覗き見た。「おお、これは・・・」言葉では言い表せないほどの感動で身震いした。石が自ら光り輝き周りをも明るく照らしている。「成功だ」声を出して言った。
自然に涙が溢れ出て頬を伝い次々と流れ落ちたがそれを拭きもせずイブの体内の機器が次々と起動していく様に我を忘れて見入っていた。それはコバルト色に輝く宝石箱のようで神々しくもあり華々しくもあった。(神様は私にイブを創ることを望んだ。だから家の
近くの小高い山に隕石を落として授けてくれ、貧乏くじしか当てた事のない私に10億円の宝くじの当たり券を授けてくださった。 そして、今考えると何もかも、するに任せて博士号まで取らせてくれた常務もまた神様の使いではなかったかと思える。今まで人が信用できず孤独感を友として生きてきた。自ら煩わしさを避けてきた。だけど神様はいつも私を見守って下さっていた。感謝を致します・・・博士は方膝を着き両手を組んで固く瞼を閉じた。