takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ#その7

その夜博士は凶夢にうなされていた。
突然巨大な怪物に襲われ粉々に飛び散る自分。暗闇に閉じ込められ、もがき苦しんでいる。そこに一筋の明かりが灯る。目を凝らすイブが白いドレスを身にまとい、感情のない表情で佇んでじっとこちらを見ている。「おおイブ!私を助けてくれ・・・身動きがとれないだ・・」跪きながら手を伸ばした。こちらに近づき、見つめ合っていたがやがてイブの瞼は閉じられ、くるっと踵を返すと遠い闇の中に消えていった。(ううwwん)と唸る自分の声で目が覚めた。ガバッと布団を跳ね除けて飛び起きた。全身に寝汗をびっしょりとかいて喉はカラカラに渇いていた。(な、なんて不吉な夢だったんだ・・・本当に夢でよかった・・)ほっとした顔で隣の寝台に横たわるイブをみた。イブはまだ目を閉じている。壁掛け時計を見た。(後半時間程で稼動する筈だ)洋服タンスを開け、下着と洋服を選びイブの足元に置いた。(いくらロボットでもこんな美女が裸で目の前にいたら目の毒だからな)博士は苦笑しながらイブの顔をみた。(よし!と・・汗をシャワーで流して、朝食の用意をしなくちゃな!)片手でモシャモシャと頭を掻きつつ、着替えを持って風呂場に行った。シャワーは汗と共に悪夢でネガティブになりかけていた気分を洗い流してくれた。風呂から出て、トーストを焼きかけ「おお~そうだ、今日から二人になるんだ」と晴れやかな顔でいい、パンをもう枚用意し、新しいカップも食器棚から選び出した。(私も彼是50歳になる。イブの為に家族とも離れ、会社も辞めた。とても世間じゃ褒められた事じゃないのは判っているが、それに倍する喜びを長年の夢と共に手に入れた。私は誰よりも幸せ者だ)インスタントコーヒーの粉をスプーンで二個のカップに入れながらそう思った。そのうち『シューシュー』とポットの湯が沸き、パンも焼けた。マーガリンを塗り、フラパンで卵とハムとでハムエッグをつくって皿に移して朝食はできあがった。大き目の盆にそれらをのせて戻ってくると、既にイブはベッドに腰掛けてこちらを見ていた。