takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

悪魔の掌中その16

薬を水と共に胃袋に流し込んだ後自分の部屋で不安と期待の入り交じった思いで机の上に両腕をのせて変化を待つ。数分もしないうちにそれは表れた。例えるなら今まで途絶える事なく淀んでいたストレスという霧が吹き飛んで雲ひとつ無い突き抜けるような澄んだ青空の中に居る様な最高の爽快感。全ての欲求不満から解放されたと感じたとき、自然と両手は大きく広げられ銀色の羽根となって太陽までも羽ばたける気がした。(僕は神となったのか?それとも死後の自分なのか?)本気でそう想い、ふと周りを見回すと日頃見飽きている質素な生活空間が、煌びやかな輝きを発して眼に飛び込んできた。
目の前にある、教科書を開いてみる。読むのではなく眼に写った瞬間に理解ができた。(こ、これは...まさか!)本棚にある分厚い本に目をやった。アインシュタインの相対性理論。子供でも知っている超有名な科学者と論名だが、きちっと理解するには、余程科学や物理の分野に秀でた才脳ある者に限られる。自分も興味本位で、買ってはみたものの、数ページも行かないで頓挫した。その後は部屋のお飾りと化したのである。
それを棚から抜き取って開いて見ると...・驚くことに全て理解できた。記号がいきいきと踊っているように感じ、それらが何故そこに有るのか示してくれているのだ。それでも最初は少し時間がかかったが、次第に早くなり中程からは一秒もかからずに流すように読んで行った。「僕は、僕は....天才になったんだ~!」思わず大声で叫んでいた。