takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

悪魔の掌中その17

宇宙の果てまでも、今の自分なら飛んで行けそうな高揚感に満ち溢れじっとしていられなくなった。部屋を出て、駆け足で家を飛び出した。夕焼けが街を真っ赤に染めて、夕御飯の買い物に出掛けるおばさんや、近所の小学生達の帰る姿が目に付く。彼等に向かって「僕は天才なんだぞ~!!」と叫びたい気持ちがこみ上げてきたが必死に抑えて、颯爽と街並みを歩いた。
見る人見る人が、余りにも間抜け面で無駄な動きをしているのを半ば呆れながら、半ば気の毒な事だと優越感に浸りながら高みから観ている自分がいる。思わず大声で笑い出したくなり手で口を抑えて「クックックッ。」と漏らしてしまい、行き交う人に変な眼で見られても気にしなかった。さあ何をしようかと立ち止まった時、それは突然起こった。『ズドwwwン!』と、体の中で確かに音がした。瞬間、果てしない暗黒だけとなった。前後左右を見渡しても暗闇の世界。(貧血?)貧血の症状って、こんな感じなのか?・・・分からない。狼狽えながら、早く回復することをただ願ってじっとその場に佇む。今思えば時速200キロのスピードで走っていた車が急停止した様な思考状態になってしまった感じ。ついさっきまで目に映っていた真っ赤な夕焼けが暗転し、突然夜に変わってしまった。身体全体に負荷が掛かった様に気だるいし、頭が鈍く痛みだした。厚い雲に覆われている様な気分になり不安感でいっぱいになってきた。目眩がし寒気が襲い吐き気がした。堪らず下水路に吐いてしまった。(僕はどうなってしまったんだ。と、兎に角、家に戻らなくては。え~と家はどこだったっけか?)マジやばいと思った。殆ど停止状態になった思考力を、必死に回復しようと試みるが(なんか、僕もう駄目だ。嫌になってきた。休みたい)倒れそうになる自分を、もう少しもう少しと励まし、騙し透かしてようやく家に辿り着き、自分の部屋になだれ込んで倒れたまま身動きできなくなった。